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限界を超えて・・・(2006年8月 全日本選手権SUGO大会)

いよいよ今シーズン2回目、そして自分にとっては今シーズン最後の全日本SUGOのレースウィークが始まります。

今回はこのレースウィークの前週に、ダンロップユーザーのためのテスト走行が二日間ありましたので、まずはそのあたりのレポートから・・・。

<8月17日 ダンロップ走行会1日目>

前回のSUGO選手権では2日間に渡ってドライコンディションのSUGOを走りましたが、初日・2日目ともにタイムが1分35秒前半で停滞してしまいました。

この停滞感を脱却すべく、今回はマシンのファイナルを若干ショートに振って持ってきました。

過去に幾度となく試してきたこのファイナルですが、そのたびにタイムが伸び悩み、結局は元に戻してきた経緯があるのですが、ここ数年で自分の乗り方も変わってきたと思うので再度トライします。

とりあえずファイナルがショートなため3コーナーなどでは安心してアクセルを開けたまま倒しこんでいけるのですが、S字の立ち上がりや馬の背の立ち上がりでアクセルが開けづらい感じがあります。

やはりタイムは伸び悩み1分35秒807がこの日のベスト。

タイムが伸びなかったため、ファイナルは元に戻すことになりそうですが、ちょっとだけ気になることがありました。

このファイナルだと、前半セクションのタイムは伸び悩みますが、後半セクションではそこそこ良いタイムが記録されています。

ショートにすると、前半セクションのタイムが上がって、スピードの乗る後半セクションでタイムをロスするのではないかと思い込んでいたのですが、どうも実際はその逆のようです。

<8月19日 ダンロップ走行会2日目>

とりあえずファイナルを元に戻して走行しますが、全日本ライダーだけの占有走行とはいえ、125ccのバイクも一緒に走っているためなかなかクリアラップが取れません。

新品タイヤを投入して走行したにも関わらず、この日のベストタイムは1分35秒384。

先月のSUGO選手権の時から全く状況を変えることができません。

<8月20日 スポーツ走行>

本当はこの日はSUGOのピットガレージで丸1日エンジンのクランクを交換作業をするつもりでしたが、昨日まででいまいちタイムが伸び悩んだので、通常のスポーツ走行枠の朝一番の一本だけ走行することにします。

ちょっとだけタイムが上がり、ベストは1分35秒100。

決して満足できるタイムではありませんが、この走行の後エンジンを下ろし、クランクを交換。

夜には作業が終わって3日間のSUGO練習遠征を終え、一旦東京に戻ります。

<8月25日 全日本SUGO 公式練習>

1回目の走行では1分35秒フラットと苦しい状況が続きますが、2本目の走行では苦しみながら1発だけ1分34秒台に突入し、まずは一安心。

ただ今回のレースは34秒台をマークするために参加するのではありません。

目標はあくまで33秒台。

あとコンマ8秒をどうにか短縮したいところです。

<8月26日 全日本SUGO 公式予選>

今回の予選は50分x1回。

とりあえず50分を丸々全開走行をすることは不可能なので、とりあえず最初の10分は軽いウォーミングアップという感じで走ってくる予定です。

そこからピットインして15分間でタイヤ交換と給油、そしてライダー休憩。

残りの25分でタイムアタック。

という感じになります。

まず最初の10分間。

焦らず軽く5周ほど流して1分36秒をマークしたところで予定どおりピットイン。

そこから新品タイヤに履き替え、残り25分、いよいよタイムアタックのため再コースインします。

焦る気持ちを抑えつつゆっくりペースアップ。

全く無理することなく3周目には36秒台、5周目には35秒台といい感じでタイムが上がってきます。

ここで全日本中堅ライダーが目の前に現れます。

「おっ、これは美味しそうなペースメーカーになりそうだ・・・」

という淡い期待もむなしく、このライダーは自分の前で35秒〜37秒台という中途半端なタイムで流すようにしか走ってくれません。

残り時間も気になり始めたのでこのライダーをペースメーカーにする作戦は断念、一旦ペースを落として前方にクリアラップを作ってから、単独でのタイムアタックを開始します。

タイムアタックに入って最初の周で早速1分34秒97をマーク。

そこから

1分34秒98
1分34秒76
1分34秒91

と4周連続で34秒ラップするものの、このあたりから体力的にきつくなってきて集中力が途絶え始め、その次の周で

1分35秒72

まで落ち込み、予選終了となりました。

正式結果は1分34秒762 予選21番手となりました。

<8月27日 全日本SUGO 決勝>

一応自己ベストをマークした昨日の予選ですが、今のままだと33秒台は厳しい感じです。

この全日本でやっつけたい相手は軒並み33秒台をマークしているのでこのままでは太刀打ちできません。

そこでミッションプランを大きく変更することにしました。

今まで全く試したことのない、おそらく誰も試したことのない全くオリジナルのミッションプランです。

先週のダンロップ走行会初日からなんとなく気になっていた、ファイナルをショートに振ったときの後半セクションのタイム。

この後半セクションだけをショートにして、前半セクションを今までどおりロング気味で走るというスペシャルプランです。

【フリー走行】

決勝当日の朝に行われる15分間のウォーミングアップラン。

ここで新しいミッションプランを見極めます。

その名のとおり軽くウォーミングアップのつもりでゆっくりペースを上げていきますが、なんと最終ラップ、それほどがんばっていないのにあっさりと1分34秒台をマークすることになります。

「やばい!大当たりしちゃった!」

タイヤは昨日の予選で使った中古タイヤで、全く無理せずに走った結果の好タイムに、密かに決勝でのブレークの予感を感じずに入られません。

【決勝】

「今日の決勝はスタート次第だな・・・」

まあ、スタートが上手くいってうまく33秒ライダーたちのバトルに加わることが出来たら、問題なく自分も33秒までいってしまう。

これは全く心配ない。

そのくらい自信がある。

問題はスタートが失敗した場合。

いかに早いタイミングで34秒以下のライダー達とのバトルから抜け出せるか・・・。

とにかく目の前にずらっといる33秒ライダーの中にも、必ずスタートを失敗して自分の目の前まで落ちてくるライダーはいるはず。

そのライダーをいかに捕まえて離さないか・・・が33秒台突入への決め手になりそうです。

決勝前は不思議といつになく落ち着いていました。

とにかく今日のレースは成るように成る。

逆に言うと成るようにしか成らない。

なんかそんな感じで、スタートの時間を静かに待ちます。

ただひとつだけ絶対避けたいこと。

自分たちの決勝の前に行われたJSBクラス決勝でスタート直後の4コーナーで多重クラッシュがありました。

ライダーの調子が悪くないだけに、スタート直後の「もらい事故」みたいなのは絶対に避けたい。

そんな感じで迎えた決勝レース。

レース人生が変わるかもしれなかったスタートは願いむなしく失敗となり、まずは35秒ライダーたちを目の前に走らせてしまうようないやな展開です。

ただ案の定一人だけ33秒ライダーがスタートに失敗し、1台のバイクを挟んで目の前にいる。

このライダーを逃がさなければレース後半に絶対に33秒台をマークするチャンスはやってくるはずです。

まず最初の2周で同じライダーに引っかかってしまいますが、その33秒ライダーもそのさらに前のライダーに引っかかっています。

「よしよし、俺が真後ろに行くまでもうちょっと引っかかっててね・・・」

なんとか自分が目の前のライダーをパスして前にでると、その33秒ライダーもその前のライダーを攻略してその前に行ってしまうという展開。

ただ次に出てきたライダーは、先ほどの33秒ライダーが抜きあぐんでいただけあってタイムはでていないのになかなか前にでることができません。

このライダーに付き合うこと3周。

この間にこの33秒ライダーとの距離は結構開きますが、この33秒ライダーはまだその先のライダーに引っかかっている状態です。

なんとか自分も自分の目の前にいるライダーの前に出ることに成功しますが、それと同時にその33秒ライダーもこのあたりの包囲網を完全に突破したようで完全に逃げられてしまいました。

となればあとは自力で出すしかありません。

とりあえず若干間隔のあった前走車に34秒ラップで追いつきますが、そこから前にでることができません。

このライダーの先には広大なクリアラップが広がっているのですが、そのすばらしいクリアラップワールドには、なにしろこのライダーを抜かないことにはたどり着けないのです。

体力的にも厳しくなりはじめてきた10周目くらいに1コーナーで最後の勝負を仕掛けに行きますが、これを被されて阻まれたところでパッシングを断念。

このライダーを抜くことに体力を使うよりも、わずかでも体力が残っているうちに自分のベストの走りをしたい。

となれば例の禁じ手を使うしか有りません。

一旦ペースを落としてこのライダーとの間隔を取ってから全開走行。

前走者をパスするために何度かハードに掛けてきたブレーキを操作する右手、クラッチを操作している左手の疲労を激しく感じながらも戻ってきたタイムが、

1分34秒604

「あーあ、やっぱり自己ベスト更新しちゃってるよお・・・」

その後またこのライダーにドン突いて数ラップ。

もう一度間隔を取り直したとしても、もう自己ベストを更新する体力は残っていないのははっきり自覚していたましたが、どうしてももう少し自己ベストを更新したい。

ダメ元で再度ペースを落としてクリアラップを確保。

もうほとんど体力の限界を超えた状態でバイクを思い通りに操れない。

それでも帰ってきたタイムは1分34秒67

ほぼ自己ベスト周辺です。

まだもう1周分くらいのクリアが残っています。

そのまま破れかぶれで全開走行を継続します。

1コーナーをクリアして2コーナーへ、そして2コーナーから3コーナーへの切り替えしのところで、ついに力尽きました。

この高速スピードでの切り返しに限界を超えた体がついて来れずに、切り替えしきれずにそのままコースアウト。

グラベルに飛び出したところで足元をすくわれ転倒を喫することになりました。

体が完全に停止したところで我に返ってみるとヘルメットの中に、まるで100メートルを5本くらい続けて全力疾走した後のように「ハアハア」と激しい呼吸音が鳴り響きます。

立ち上がることすら困難なほど体力が消耗しています。

残り4周での出来事でした。

体力が最後まで持たないことも情けないことです。

レース中にペースダウンしてクリアラップをつくってタイムアタックすることも情けないことです。

ただ、体力の限界を超えたところで自己ベスト付近のタイムをマークできたこと、そして結局転倒に終わった最後の周も諦めずに自己ベストを更新しようとしたこと、は満足しています。

久しぶりに限界(ライディングの限界というよりも、体力の限界)に挑んだ、終わってみれば気持ちが良いレースになりました。

・・・NEXT・・・

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