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こぼれ落ちた勝利・・・(2006年7月 筑波スーパーカップ)

夏本番、毎年猛暑のなかで行われるこのレースがやってきました。

まあ、エンジンパワーの出ない夏場のレースのためタイムアップはあまり期待できませんが、1ヶ月を切った全日本SUGOに向けてもう一度レースモードに入れておくには良いチャンスになります。

そして忘れていけないのが前回のレースで後塵を拝したW選手へのリベンジレースでもあります。

<7月28日 公式練習>

相変わらずコンスタントに1分0秒台中盤では回れるのですが、今ひとつその先の世界に踏み込む何かきっかけのようなものが見つけることができません。

ただこの0秒中盤のタイムの出方があまりよく有りません。

この時点で結構余力ないほど攻めている感じなのです。

思い起こせば今年のシーズン初乗りでマークした1分0秒8は本当に余裕の走りで出していたのですが、シーズンど真ん中のこの段階で1分0秒中盤が一杯一杯というのは、何か歯車がかみ合っていない感じがします。

今回のレースはコンディション的にも自己ベストを大きく更新できなくても、コンディションの良くなる次の筑波のレースあたりで大きく飛躍するための何かをこのレースで掴み取っておきたいところでしたが、全く手がかりがないといった状況です。

<7月29日 予選・決勝>

【公式予選】

まずコースインしてから数周のところで1分1秒台のラップが続きます。

この時点であまり調子が良くないことが分かります。

普通の調子であれば、ちょっとペースを上げれば0秒台に入ってくるのですが、今日の調子ではそうはいきません。

とりあえずそこからさらにペースを上げて0秒台に入りはじめますが、後半アタックしたいところで遅いライダーにひっかかったりしながら、結局タイムは1分0秒800と低迷します。

「まあ、それでもポールは取ったかなあ・・・・」

「タイムが出てこないのは、きっとこの暑さでエンジン走ってないんだろう・・・それは周りのライダーも一緒だろうしな」

と、予選のチェッカーが振られた後のスロー走行中にリーダーボードに目をやるとゼッケン37番が3番手に掲示されています。

「えっ!それってまずいんじゃないの!」

なんと本来であれば余裕のポールポジションを取らなければいけないこのレースで屈辱の予選3番手。

決勝レース前に厳しい現実を突きつけられることになります。

【決勝】

なんといっても予選3番手のショックは大きく、このレースに勝てるというイメージが全く持てない深刻な状況です。

それなりに頑張ったはずの自分の予選タイムより速いラップタイムを刻んでいるライダーが2名もいるのだから、かなり頑張らないとこの2人に勝つことは難しそうです。

とにかくこのまま決勝のレースを走るだけでは局面の打開は図れないと判断し、ちょっとだけバイクのサスペンションセッティングを変更して挑みます。

サイティングラップで違和感を感じたらすぐに元に戻すつもりのセッティングだったのですが、実際にサイティングラップを走った感触は、ずばり

「これは行ける!」

でした。

まさに「局面を打開する」というのはこういう一発のことを言うのでしょう。

停滞している何かを吹き飛ばすような新しい風が吹き込んできたという感じです。

さて、いよいよレースがスタートします。

スタートは可も無く不可もなくで3番手で1コーナーに進入。

バックストレートエンドで後輩の油井君を交わし2番手に浮上。

この時点で予選1番手のW選手とはホームストレート半分くらいの差がついていましたが、その差を2周くらいで削り取り、それからテールtoノーズの一騎打ちとなります。

その後2周ほどこのW選手の真後ろで走行しますが、タイム的には1分1秒台にとどまり、W選手もペースを上げてくる気配がありません。

「それなら先に行かしてもらおうかな・・・」

5周目のバックストレートエンドでこのW選手を抜いてトップに浮上します。

前回のレースでもそうだったように、W選手のような若いライダーは単独ではペースが上がらなくても、こちらが前に出たとしてもそれを振り切ることが容易でないことは想像に難く有りません。

ちなみに7月のSUGO選手権にもこのW選手はエントリーしていたのですが、その練習走行でバリバリの全日本ライダーの後ろに喰らい付いて走っている彼の姿を目撃しています。

なのでとにかく前に出たら全力で振り切るしかありません。

2周ほど前を走ってからバックストレートで後ろを振り返ってみるとちょっと引き離せているのが分かりました。

さらに2周ほど走ってみて振り返って見るとあきらかに先ほどよりも離れている。

「これは振り切れているかも・・・」

この時点でこのレースの勝利は確信しました。

真夏のレースで体力的には苦しいですが、なんとかこのまま逃げ切れそうです。

「いやあ、苦しいレースになると思ってたけど、意外な展開だなあ・・・」

そんなことを呑気に考え始めた矢先、目の前に周回遅れのライダーが登場し、このライダーに第1ヘアピン立ち上がりからCXコーナー脱出まで丸々引っかかってしまいます。

「うっ、結構今のタイムロス大きかったよなあ・・・」

その先の第2ヘアピンを立ち上がって念のため後ろを振り返ると、なんとW選手が自分の後ろにベタ付きで迫っています。

「うわあ、折角築いてきたリードを一発で失っちゃったよお・・・」

そこからもう一度気を取り直してペースアップ。

同じように2周ほど全力で走ってからバックストレートで振り返ると、先ほどまでとはいかないもののやはり少し離せているのが確認できます。

「よし、これならこのままチェッカーまで逃げ切れる!!!」

すると今度は別のトラブルが襲い掛かってきます。

前回のSUGOでも見舞われた「ギア抜け」です。

そこからほぼ毎周、1コーナー立ち上がりから第1ヘアピンまでの間でギアがうまく入らずに失速してしまうのです。

結局残り2周を切ったくらいのところで、この「ギア抜け」に見舞われもたついているところをずばっと刺されて、このW選手にトップを奪われてしまいます。

そして向かえた最終ラップ。

勝負どころの第2ヘアピンの立ち上がりでアウト側の縁石に乗り上げてしまいスピードを上手く乗せきれません。

その結果バックストレートエンドで勝負ができず、そのままの順位のまま最終コーナーに進入。

ただ前回の筑波のレースでは同じように最終コーナーは後ろで進入したものの、ホームストレートのコントロールラインではほぼ同着に持ち込んだ経緯があります。

「あきらめるな!最終の立ち上がりで絶対刺しきるんだ!」

自分にそう言い聞かせて最終コーナーを立ち上がりますが、コントロールラインまでには届かずがっくりとうなだれてチェッカーを受けることになってしまいました。

チェッカーを受けることに・・・

チェッカーを・・・

いや、確かに無情にも振られるチェッカーを見たような気がしたんですが・・・。

レースが終わってゆっくりコースを1周します。

勝ったW選手はよほど嬉しいのか一目散で走り抜けていきます。

バックストレートまでいったところでさらに後方からやってきた集団がレース終了後のクールダウンラップだというのに、結構なスピードで自分のことを抜いていきます。

筑波のレースでは3位までのライダーはレース終了後はピットロードに入らず、そのまま本コース上を走ってきて表彰式をします。

3位のライダーがピットロードに入らずに最終コーナーに入っていくのが遠くに見えます。

ところがその後ろにいた本来ピットロードに入らなければならない4位のライダーもピットロードに入らず最終コーナーに入っていきます。

「あれっ、あいつ間違えちゃったのかな??」

しかしそこでハッと気づいたのは間違ったのが4位のライダーではなく自分であったことでした。

「まさか!」

と思ってレース終了を知らせる黄旗を確認しますが、どこにもそれらしきものは振られていません。

「やばい!レース終わってなかったのか!!!」

あわててそこからフルスロットルで加速し、最終コーナーに進入、そこを立ち上がると先ほど確認したと思っていたチェッカーが振られています。

なんと前代未聞の残り周回数間違い。

実際にはあと1周残っていたのに、レースが終わったものと一人で勘違いしてペースダウンしてしまっていたのです。

結局レース結果は4位。

レース歴10年にもなろうかという自分が、前回のSUGOではガムテープで窒息寸前、今回は周回数勘違い・・・2回連続での大失態です。

まあ今期初優勝はお預けになりましたが、

・周回遅れのライダーにタイミング悪く引っかかったこと
・マシントラブル(=「ギア抜け」)
・周回数間違い

がなければ勝っていたレースでした。

そのことはレース後、ライバルのW選手のチーム関係者の人たちも認めてくれていたので気持ちは晴れやかといったところです。

・・・NEXT・・・

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