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屈辱の予選落ち・・・(2006年5月 全日本選手権筑波大会)

惨敗に終わった筑波選手権の後、全日本筑波に向けて怒涛の練習走行ラッシュが始まります。

2週間で走行チャンスは5日間。

なかなか浮上のきっかけを掴めないままここまで来ていて、残る望みはコンディション(気温や路面温度)のみ。

逆にコンディションが上がってきても、まだこんな調子だとしたらもうこれはライダーの限界としか言いようが有りません。

シーズン始まったばかりですが、日本ハムの新庄選手のようなシーズン途中の引退宣言をしなければならないほど、精神的に追い詰められています。


<4月19日筑波練習走行>

この日は事前の天気予報ではコンディションが良くなるはずでしたが、残念ながら朝から曇っていて気温は上がってきません。

それでも復調のきっかけを掴むべく全力で練習走行に挑みます。

【1本目】

やはりどうしてもペースをあげる前のペースが上がらない???という状況から抜け出せません。

ぼちぼちペースを上げてきている4周目・5周目のタイムがともに1分2秒台。

本人は1分1秒台くらい出しているつもりで走っているのですが・・・。

そこからかなりペースを上げていって1分1秒台に入ってきますが、ここでもしばらく1秒台で足踏み状態が続きます。

12周目にようやく1分0秒台に突入。

次の周も0秒台をマークしますが、ともに0秒台の後半のタイム。

この0秒台後半でほとんど余力が無くなっている苦しい状況が続きます。

【2本目】

1本目と比べてタイヤと体力は消耗し始めていますが、目はスピードに慣れ始めているという状況で挑む2本目。

8周目という最近では比較的早い段階で1分0秒台に突入し、そこから一気に0秒中盤、0秒前半のタイムを目指してペースを上げていくのですが、タイムは0秒9、0秒8、0秒7の間を行ったり来たりという感じです。

10周目を過ぎたあたりから腕が上がり始め、それ以上のペースアップは苦しくなってきました。

ここで走行方針を変更します。

とりあえずペースアップは諦めて、とにかくペース維持。

体力的に苦しい状況でこの1分0秒後半のペースだけは維持しようという走りに切り替えます。

この方針転換は良かったかもしれません。

今までしゃかりきになってタイムアップをしようとしてきましたが、ここで淡々と1分0秒台で走ることによって、以前のように

「いつでも0秒台は出る!」

という雰囲気は出てきました。

結局この日の走行のベストタイムは1分0秒744。

ただ2本目の後半は1分0秒台を外すことなく走ることが出来たので、調子は若干上向いてきた感じはあります。

あとはしつこいようですが、コンディションです。

コンディションの上昇とともに自分の調子も上がっていくことを祈るばかりです。

<4月22日筑波練習走行>

「怒涛の筑波練習ラッシュ」の2回目です。

とうとう待ち望んでいたコンディションになりました。

朝から空は晴れ渡り、太陽の熱が路面温度を上昇させてくれています。

心から待ち望んでいた「レコードコンディション」です。

今回の走行チャンスは3回。

1回目は今まで違うセッティングを試してみて、2回目には新品タイヤを投入。

ここで一気にタイムを出して、そのままの勢いで3回目を走りきるという目論見です。

【1回目】

コースイン4周目で1分1秒前半のタイムをマークし、ここ最近の「ペースを上げる前のペース」はいい感じで上がってきます。

ただそこから全力走行に入るものの今ひとつペースが上がらず1分0秒後半を2回マークしただけで、この走行は終了します。

まあ、この走行は新しいセッティングを試しただけなので、思ったほどタイムが伸びなかったこのセッティングには見切りをつけ、以前のセットに戻して新品タイヤを装着し、次の走行に備えます。

【2本目】

コンディションは最高。

タイヤは新品。

「ここでタイム出さないでどこで出すんだ!?」

っていう感じの気合満々でコースインします。

先ほど同様コースインして4周目でさらっと1分1秒台に突入。

まずまずいい感じです。

ここからさらっとペースアップして0秒中盤、かなり気合を入れて59秒台・・・といきたいところでしたが、なかなかそうはいかず以前と同じように1分0秒後半でしばらく足踏み状態が続きます。

そこに知り合いのライダーが登場。

先ほどの走行であっさり59秒台に突入している調子の良いライダーなので、後ろを追いかけてペースを作ってもらうことにします。

9周目:1分0秒662
11周目:1分0秒609
13周目:1分0秒538

とようやく0秒中盤のタイムが出始めるものの、59秒台には程遠いまま走行終了。

少しづつタイムは上がってきていますが、新品タイヤを装着して本番さながらの条件と気合で走ったわりには、寂しいとしか言いようの無いタイムです。

走行後、次の3回目の走行に備えて準備をしますが、正直この時点で余力がある感じは全く無く、この3本目でのタイムアップへの期待することは難しい状況でした。

【3本目】

過去の経験から言って、「筑波の練習3本目」でタイムが出たためしはありません。

体力的に厳しくなってきていて集中力を維持するのが難しいことに加え、その日の2本の走行で体に染み付いてしまった悪いイメージが、結局そのまま反映されてしまうのが3本目の練習なのです。

(調子が良いときは、「1日に3本も走ろう」とは思わないので、3本走る時というのは決まって調子が悪い時なのです。)

この3本目の走行前に、手伝いに来てくれているチーム員の小野君から

「ひと眠りしてきたら・・・?」

というアドバイスを受け、30分ほど仮眠をとることにしました。

結果的にはこの仮眠が状況を救ってくれたのかもしれません。

先ほどまで「こんなんじゃダメだ!こんなんじゃダメだ!」のがんじがらめにあっていた頭の中が妙にすっきりして、その日の1本目の練習に向かうかのような新鮮な気持ちでコースインできたのです。

コースインして6周目で1分0秒496をマーク。

8周目に1分0秒407
9周目に1分0秒303

と、今シーズンなかなか手の届かなかった0秒前半のタイムまでペースを上げることができます。

ここであることに気付きます。

「あれ?最近あんまりリアブレーキ使ってなかったな・・・」

この走行では無意識のうちに結構強めにリアブレーキをつかっていたのですが、これは先ほどまでにはない感覚です。

リアブレーキを使っているからかどうなのかは良く分からないのですが、そんなにムキになって走らなくても0秒台の中盤から前半のタイムを淡々とマークすることができます。

結局この走行では59秒台には入れることができなかったのですが、1分0秒3あたりのタイムであればいつでも入れられる・・・という雰囲気になってきました。

これはある意味、ほぼ去年のレベル付近まで復活している感触です。

「やっぱりリアブレーキ使ったほうが良いのかなあ???」

「リアブレーキを使う」ということは「コーナリング中のスピードを落とす」ということになります。

実際のところ去年のタイム出ていたときにリアブレーキを多用していたかどうかの記憶が定かではないので、その辺りで今ひとつ確信を持つことが出来ません。

ところが帰宅してからの嫁さんとの会話・・・

自分:「リアブレーキ使ったら少し楽にタイム出せるようになってきたよ・・・」

自分:「でもなあ、去年の良い時にリアブレーキ使ってたかどうか良く覚えてないから、使ったほうが良いのか、使わないほうが良いのか良く分からないんだよ・・・」

嫁:「はあ???去年はリアブレーキ使ってたじゃない!」

自分:「へっ!なんでそんなこと分かるの?去年リアブレーキの話なんてしたことあったっけ???」

嫁:「何言ってんのよ!去年、自分で言ってたじゃない!『リアブレーキ使うようにしてから調子が上がってきた!』って。私はっきり覚えてるわよ!忘れちゃったの???」

正直未だに全く覚えていないのですが、去年自分でそう言っていたそうです。

この何気ない夫婦の会話。

もしかしたら今シーズン最大の転機になったかもしれません。

何はともあれ全日本筑波の本番まで、走行チャンスは3回。

反撃の狼煙が上がるのか・・・次の練習走行後に答えが出そうな気配がしてきました。

<4月26日筑波練習走行>

この日から始まる3日間の連続走行が全日本筑波本番前の最後の練習走行になります。

この日も天気は良く、コンディションばばっちり。

しかも、全日本の有力ライダー達が大挙訪れていて上手く後ろにつけることが出来たら何か良いヒントをもらえるかもしれません。

【1本目】

今回は中古タイヤでの走行になりますが、これで59秒台をマークできたら良い感じで本番を迎えることが出来るので、全開モード120%で挑みます。

コースインして5周目に1分0秒台をマークします。

(そうそう!0秒台はこんな感じであっさり入るはずなんだよな!)

ほんの数週間前までこの5、6周目あたりで1分2〜3秒台で足踏みしていたことが嘘のようにいい感じでペースが上がってきます。

そこから一気に59秒台までペースを上げていきたいところでしたが、タイムは0秒4〜6あたりを行ったり来たりという感じ。

最後の最後で、とりあえず今期ベストとなる1分0秒203をマークして走行終了。

まあ、まずまず調子は上向いてきているようです。

【2本目】

この走行はサスペンションのセッティングを大きく変更してみます。

イメージ的には車体全体の重心を下げる方向です。

コースイン直後のS字あたりですぐにこの変更を体感することができます。

(これは良いかも!思いっきりバイクを振り回せそうだ!!!)

(この走行はちょっと暴れん坊になっちゃおうかなっ!)

「ライダーのテンションはバイクからもらうもの」という持論どおり、バイクの重心をわずか1mm程度低くしただけで「攻める気持ち」が先ほどの走行と比べて50%増しくらいになっています。

ところがバイクとは難しいもので、先ほどよりも格段に攻めているつもりなのに、肝心のタイムはコースイン後8周目まで1分1秒フラット付近で停滞します。

9周目に1分0秒563
10周目に1分0秒301

となんとかペースを取り戻してきますが、ライダーの感覚ほどはタイムが伸びてきません。

ここで遅いライダーに引っかかり一旦ペースを落としてから、再度ペースアップ。

それでもタイムはやはり0秒中盤。

14周目、さらに頑張って1コーナーに進入。

今までの中では最高の形でクリアした感覚があったので、この周に渾身のタイムアタックを試みます。

第2ヘアピンを立ち上がりバックストレートに出てくるまでこれといった失敗はなし。

(この周は出てる!今期ベストは間違いない!・・・残るは最終コーナーだけ・・・お願い!59秒入って!)

と思った矢先、突然エンジンの力が抜けてバイクが前に進まなくなってしまいました。

無念のタイムアタック中断・・・そのまま惰性でピットロードに向かうことになります。

症状としては昨年の全日本筑波決勝で見舞われたピストンリング破損と同じような雰囲気です。

1個12万円するシリンダーを一発壊してしまう嫌なトラブルです。

戻ってきて早速エンジンをばらしてトラブルのチェックをします。

まず一つ目のシリンダーを外してみますが異常なし。

そして祈るような気持ちで二つ目のシリンダーを外すと・・・

「うわあ・・・」

通常そこにあってはならないアルミの粉や破片がボロボロ出てきます。

原因はピストンリングの破損ではなく、ピストン本体の破損。

ピストンのスカート部分の下半分から割れて粉々になってしまっています。

これらのアルミの粉や破片がクランクケースにまで回ってしまっていることは想像に難くなく、明日以降の走行も絶望的な状況に追い込まれてしまいました。

(あーあ、このまま全日本本番突入かあ・・・)

と一瞬諦めかけたのですが、

(いや待てよ!どちらにしろ全日本前にはクランク交換する予定だったので部品は用意してある。っていうことは、今晩と明日にその作業をやってしまえば、明日は無理でも明後日の走行には間に合う!)

ということで急遽、チームのお店に戻り徹夜でエンジンの修復に取り掛かることになりました。

<4月28日筑波練習走行>

水曜の晩と木曜日を丸1日使ってバイクを修復し、木曜の晩に改めて筑波に向けて出発。

そして今日この日が全日本筑波前の最後の練習走行になります。

この日のコンディションは文句なく今期最高。

そしてエンジンには新品のクランク、タイヤは前後ともに新品。

最高の条件の練習になります。

【1本目】

今回の走行に向けての最大のテーマはバイクの重心です。

一昨日の走行で2種類の重心をテストしました。

1)昨年までの自己ベスト仕様
昨年59秒7の自己ベストをマークした仕様。今期ベストの1分0秒2もこの仕様でマーク。

2)ちょっと重心を下げてみた仕様
乗りやすい、攻める気に自然となれる仕様。ただ思ったほどタイムは出ない。それでも1分0秒3はマークしている。

この二つのどちらを選択するか?という問題です。

ライダーとしては「攻める気」になる2)の仕様を選択したくなるところなのですが、必ずしも「攻めやすいバイク」=「タイムが出るバイク」ではないことを経験しているので、今回はもう一度1)の仕様で行ってみることにします。

1)の仕様は言い換えれば、「攻め切れなくてもタイムがでる仕様」であり、「ライダーがそこから頑張ればもっとタイムがでる仕様」とも取れるからです。

今回はコースインして4周目に1分0秒台に突入。

今期最短での0秒台突入で調子は悪くありません。

そこで一旦間合いを取るためペースダウン。

再度ペースを上げ初めた8周目に1分0秒433、9周目に1分0秒393

思ったほどタイムが上がってきませんが、そこからもうワンランクペースを上げた10周目のタイムが59秒982

今年ここまで随分苦しみましたが、ようやく念願の今期初の59秒台突入です。

それほど余力無い雰囲気でもなかったので、そのまま59秒台を連続ラップすべく走り続けますが、その後の3周は思惑を外し1分0秒台前半で足踏みしてしまいます。

なのでこのあたりで2本目に体力とタイヤを温存するために一旦走行終了しました。

【2本目】

1本目で59秒台をマークした後、1分0秒台に落ち込んだことは頂けない感じでしたが、とりあえず「59秒台」というスタート地点に立てたことから精神的にはリラックスした状態でコースインします。

目標は59秒台連続ラップということになりますが、この時点では「まあ、問題なくできるでしょ!」という楽観ムードが漂っていました。

1本目と同様、コースイン後4周目には1分0秒台に突入。

手ごたえはばっちりです。

5周目、さらにペースを上げてラップタイマーをちらっと見ると1分0秒1の表示。

「うわっ、結構出てる!やっぱり結構調子いい!」

と思ったのですが、よくよくラップタイマーを見てみると1分0秒7の見間違いであることが判明。

ささいなことですがこれは精神的にがくっときました。

1分0秒1と1分0秒7。

その差はたったの0.6秒ですが、ライダーにとっては大きな差です。

1分0秒1なら「おっ、思ったより出てる!」ですが、1分0秒7だと「うわっ、思ったより出てない!」なのです。

この精神的なショックが尾を引いたわけではないと思うのですが、その後もタイムは伸び悩み1分0秒中盤で周回を重ねます。

ただ先ほどの走行からバイクのセッティングは何もいじっていないのに、明らかに1コーナーや第2ヘアピンのクリップ付近で、フロントタイヤの接地感がなくバイクの向きを上手く変えることが出来ません。

乗り方をいろいろ試してみるのですが状況は改善できず、結局この走行のベストタイムは1分0秒307という平凡なタイムに終わってしまいました。

タイム云々もさることながら、本番直前になって突然顕在してきた「フロントタイヤの接地感不足」

もう少し時間があればセッティングであれこれ対策しようもあるのですが、この走行をもって全日本前の練習は終了。

あとは泣いても笑っても全日本本番のレースウィークしか残されていません。

今期初の59秒台突入という明るい材料もあったこの日の走行ですが、一方で大きな不安を残したまま全日本を迎えることになってしまいました。

<5月12日 全日本筑波1日目 公式練習>

いよいよ全日本筑波のレースウィーク突入です。

今年最初の全日本レギュラーライダーたちとの対決が始まります。

ここで自己ベストを一気につめて名を馳せたいところですが、このレースウィークの天気予報はレースウィークの前日から翌日まで・・・つまり木曜から翌週の月曜までという信じがたい状況です。

しかしながら願いが通じたのかこの日は天気予報が外れてドライコンディション。

もしかしたらこの日がドライコンディションで走る最後の筑波になるかもしれないので、初日から全開走行でいきます。

【公式練習1本目】

久々の全日本公式練習、はやる気持ちを抑えつつペースアップし、いつものとおり4周目で0秒台中盤に突入します。

そこから一気にペースアップしていきたいところですが、コース上にはマシンのセットアップのためピットイン・ピットアウトを繰り返すライダーが多く、今ひとつクリアラップを取ることが出来ずに0秒台での走行が続きます。

時折有力ライダーの後ろにつけることに成功しますが、有力ライダーにとって初日の1本目の走行はマシンのセットアップに費やす段階なのでしょうか?なかなか全開で引っ張ってもらえるような美味しい状況にはなりません。

「引っ張ってもらおうなんて甘いっつーことですよね」

やむを得ず淡々と0秒台で周回を重ねますが、タイムが0秒台で停滞してきていたので、12周目に一旦クリアラップを作るためにペースダウン。

そこから再度ペースを上げ始めた13周目のタイムは1分0秒383、思惑を外していつもどおりの平凡なタイムです。

(うーん、結構厳しいのか・・・)

気を取り直して再度アタック。

戻ってきた14周目のタイムが・・・来ました!

59秒870

いい感じであっさり59秒台突入です。

(まだまだここから!59秒台は通過点!)

とばかりにさらにタイムアップを試みますが、次の周1コーナーを立ち上がったところでイエローフラッグで振られていて、その先の1コーナーで転倒した車両とまったく動く気配の無いライダーの姿が視界に飛び込んできます。

ここで我に返ってしまい一気にテンションが下がってしまって、次の周でピットイン。

ちょっと早めですがこの走行を切り上げました。

この1本目の公式結果は並み居る全日本ライダーの中にあって11番手という好位置をゲット。

当面のライバルと思っているライダー達は軒並み自分よりも下位に沈んでいます。

決勝が終わってこの結果なら最高なのですが、まだまだ1本目が終わったばかり。

他のライダーたちもこの後ペースアップしてくることは間違いないので楽観はできません。

【公式練習2本目】

1本目で59秒台をマークしたので、この2本目はリラックスして望めそうです。

とりあえず59秒台で連続ラップして、58秒台への手ごたえを掴みたいところでしたが、これまた思惑を外して0秒台中盤のオンパレード。

後半になって0秒台前半に入ってきますが、結局ベストタイムは1分0秒095で走行を終了してしまいました。

「1本目で59秒台入りながら、2本目は0秒台に沈む」

というのは先週の練習と同じパターンです。

いろいろ原因を考えてみますが、なかなか心当たりがありません。

ただなんとなく2本目のほうがコース上の自分以外のライダーが気になって集中しきれていなかったような自覚はあります。

この走行の正式結果は18番手

そしてこの日の1本目と2本目の総合正式結果は15番手で、レースウィーク初日を終えることになりました。

<5月13日 全日本筑波 2日目 公式予選>

昨日の公式練習までは天気はもったものの、この日は朝から完全に雨。

ウェットコンディションでの予選になります。

元々ウェットコンディションは大の苦手な自分でしたが、ここ数年雨のレースが続いて今では以前ほどの苦手意識はなくなってきています。

それどころか

「間違いなく他の全日本ライダーたちより自分のほうが雨の筑波を走ってきている。これはピンチじゃない!チャンスなんだ!」

などと思うほどになってきていたのです。

そしていよいよ25分間の予選開始されました。

1周目でいきなりヘルメットのシールドが曇ってしまってすぐにピットイン。

応急的に対策をして、再度コースインしすが、やはりシールドが真っ白に曇ってしまい再度ピットイン。

再度対策してピットアウトとしてみると、今度はなんとかシールドの曇りは収まり、いよいよタイムアタックの開始です。

ところがいざペースを上げようにもタイヤのグリップ感が全くありません。

タイヤを路面に押し付けるためにちょっとアクセルを開けただけで、ずるずるとリアタイヤが滑り出してきます。

あれほど走りなれてきたはずの筑波のウェットコンディションなのですが、よりによってこの大事な場面で全く違う様相を呈しているのです。

普段なら雨でもドライコンディションと同じように膝やつま先を路面に擦り付けるほどバンクできるのですが、この日はなかなか膝をするところまでバンクできません。

次から次へと後ろからやってくるライダーに抜かれ、そのたびに必死で付いていこうとするのですが、大きく離されてしまいます。

また肝心のラップタイマーが全く作動せず、一体全体自分のタイムがどのくらいなのか皆目検討もつきません。

ただいつもよりタイムは出ていないことだけは間違いなさそうです。

後半少しづつペースを上げてみますが、CXコーナーの立ち上がりでリアタイヤを大きく滑らし、そのままコースアウト。

からくも転倒は免れ、気を取り直して再度タイムアタックと行きたいところでしたが、ホームストレートに戻ってくると予選終了を知らせるチェッカーが振られていてそのまま終了。

結果は・・・。

予選トップのライダーの110%のタイムをマークできず屈辱の予選不通過です。

ただ、全日本のGP250クラスは予選落ちがないので、決勝出走のための嘆願書を主催者に提出すれば、ほぼ間違いなく決勝レースへの出走は認められるはずです。

あわてて事務局に向かい嘆願書を作成・提出し、そこでも担当の人から「多分嘆願書は通ると思うので大丈夫ですよ」と言われていてそれほど心配していなかったのですが・・・。

この日の夕方、レース主催者からの正式通達は以下のようなものでした。

「明日の朝のフリー走行でトップタイムの110%をクリアした場合のみ決勝への出走を認める」

もちろん明日の朝フリーがドライコンディションなら全く問題ありません。

しかしこの時点での明日の天気予報は朝方に雨が上がって、その後は天気は急激に回復していくというもの。

明日フリーが雨、もしくはハーフウェットのコンディションとなると、ここで110%規定をクリアするには相当の覚悟で挑まないと厳しくなると思われるわけです。

ここにきて我が人生最大の「追試」が課せられることになったのです。

<5月14日 全日本筑波 3日目>

この日課せられることになった人生最大の追試(朝の15分間のフリー走行でトップタイムの110%をクリアすべきこと)ですが、厳しいコンディションの下で行われることになりました。

ドライコンディションになれば全く問題のない追試の課題ですが、前日の天気予報どおり雨は朝方まで振り続け、朝目覚めた段階では完全にウェット。

しかもその後雨は止み、約2時間後のフリー走行の時点でどのようなコンディションになるのか全く予想がつきません。

朝からマシンの準備はメカニックに任し、自分は自転車で時間を追うごとに変化していくコース状況を何度も確認しにいきます。

とにかくタイヤ選択を一発ミスすればその時点でアウトなのです。

完全なウェットコンディションならレインタイヤ
完全なドライコンディションならスリックタイヤ

これなら悩む必要ないのですが、ハーフウェットになるとどちらのタイヤでいくか選択が難しくなります。

この時点では、そこそこドライの路面が広がっていても、完全に乾ききっていないコーナーがあるのであれば、レインタイヤを選択しようと思っています。

スリックタイヤで濡れてる路面に乗って一発転倒するだけでもアウト。

前回の地方選手権でドライの路面をレインタイヤで走って1分5秒台は出ることが確認できているので、トップライダーが1分0秒を切ってこれない状況だったらレインタイヤの方が精神的にも攻めやすいと思うからです。

本当に完全なドライにならないのであれば、ところどころ軽く濡れているような路面=つまりトップライダーでも1分0秒を切れないくらいのコンディションというのが理想なのです。

ところが出走前になって路面はどんどん乾いてきています。

S字、第一ヘアピン、最終コーナーあたりは完全にドライ。

ただ1コーナーは路面が光るほどではありませんが、乾いてる部分はライン一本分もなし。

あとダンロップコーナーは軽くウェットパッチが残るような状況。

本当に微妙な状態でフリー走行の時間を迎えることになってしまいました。

自分以外のライダーは全員スリックタイヤを選択してる中、散々悩んだあげく自分はレインタイヤでの出走を決断。

とにかく110%をクリアすることだけを考えたらレインタイヤのほうが確実と踏んだわけです。

いよいよフリー走行に向けて各ライダーがピットロードにバイクを移動し始めます。

さあ、泣いても笑ってもこの試練を乗り越えなければ決勝の出走はありません。

暖気場で暖気中の自分のバイクを受け取りに行きます。

ここで、自分のバイクの周りで今回のレースを手伝ってくれている仲間たちが騒然としています。

自分 「どうかした???」

仲間 「島村さんのバイクのエンジンからオイルが漏れてきています!!!」

自分 「うっ!嘘でしょ・・・」

もうフリー走行のコースインは始まっています。

たった15分しかないフリー走行で今からオイル漏れの対策をする時間なんてありません。

絶対絶命のピンチ!

「終わった・・・」

正直この時点では天を仰ぐしかなかったのですが、仲間の一人が自転車でその場から400Mくらい離れているところにあるテント(走行以外のときに作業などをする場所)まで工具と部品をとりに走ってくれているので、

「もう、任せるしかない・・・これでダメならそれまでだ・・・」

なにしろオイル漏れの原因なんてそう簡単に特定できるものではありません。

そうです、簡単に特定できるものではないのですが、ここでハッとあることに気がつきます。

クラッチのオイルシールの入れ忘れ・・・。

昨日クラッチ周りの交換を仲間にお願いしたときに、それを入れ忘れないように念を押すのを忘れていたことに気がついたのです。

普段自分でやるときは忘れるはずもないのですが、クラッチハウジングの交換などは他の仲間にとっては非日常的な作業なので、このポイントを念押し忘れていたのは完全に自分のミスです。

ということでクラッチ周りを取り外して、再度装着。

若干減ったであろうオイルも適当に継ぎ足していざコースイン。

残り時間は推定5分あるかないか・・・。

ところがコースインと同時に赤旗が振られているのが視界に入ってきます。

赤旗中断です。

とりあえず1周弱コースコンディションを確認しながら、そのままピットイン。

1コーナーだけは今一状況がわかりませんでしたが、1コーナー以外は完全にドライコンディションです。

とりあえずここでの赤旗中断はラッキーでした。

この時点でトップライダーのタイムは1分0秒前半くらいです。

しかしここまで路面が乾いてくるとおそらく59秒台には入れてきそうな雰囲気です。

この赤旗中断がなくてそのままレインタイヤで走っていたら110%クリアはかなり難しい状況になるところでした。

「わりい!リアタイヤだけスリックに変更して・・・」

仲間にそう告げますが、後輩の油井君から青ざめた顔で

「島村さん、スリックタイヤがついているホイールのハブを持ってきていません」

という絶望的な返事が返ってきます。

うー、またしても万事休す。

仲間の小野君は「フロントタイヤだけもスリックに替えようか!!!」と声を掛けてくれますが、1コーナーの濡れた雰囲気がちょっと嫌な感じだったので、フロントはレインタイヤのままで行くことにします。

ところがこの赤旗中断が思った以上に長かったので、

「油井君!悪いけどダメ元でリアタイヤのハブをテントにとりに行ってもらえる・・・間に合わなかったら無駄足になっちゃうから申し訳ないんだけど・・・」

まあ、心の中ではレインタイヤでの出走の覚悟は出来ています。

あとはやるだけのことをやるだけです。

それからしばらくして、残り5分のフリー走行の再開を告げるブルーシグナルが点灯。

「よし!レインタイヤで一発出しするしかねーか!!!!」

とまさにコースインしようとしたところで、先ほどハブを取りに戻ってくれた油井君が到着。

ただでさえ残り少ないフリー走行は1周でも多く走りたいところでしたが、ここは落ち着いてリアタイヤをスリックに交換してもらうことにします。

早くにコースインしたバイクはすでにホームストレートに戻ってきているような状況で、ようやくホイールの交換が終了、コースインします。

フロントがレインタイヤなのでコーナーの進入は無理できませんが、立ち上がりはスリックタイヤなので思いっきりいけます。

ただスリックタイヤは完全に暖まっていないとグリップしないので、いきなり攻めだすと転倒する危険性があります。

一応直前までタイヤウォーマーで暖めてはいましたが、ここは焦る気持ちは抑えてとにかく2周だけは我慢。

まずはコースイン直後の1周はタイム計測はできません。

その後の1周はタイヤのグリップを探りながらペースアップして1分7秒台。

ここからはタイムアタックになりますが、第一ヘアピンの進入と立ち上がりでフロントにレインタイヤを装着してペースを上げることのできない自分を、前後スリックタイヤを装着したトップライダーが立て続けにものすごい勢いでパスしていきます。

もちろんこのトップライダーたちには自分の特殊な事情など知る由もなく、ベストラインを譲った走行を強いられてしまいました。

「この周はダメだ!次の周でタイムアタックやり直しか!」

とホームストレートに戻ってきたところで無情にもチェッカーフラッグが振られてしまい、フリー走行は終了。

タイムは1分5秒712。

トップのライダーが1分を切っていなければ110%をぎりぎりクリアー・・・というところだったのですが。

結果はトップのライダーのタイムが59秒532
110%の基準タイムが1分5秒485

0.227秒足りずに追試は不合格となってしまいました。

無念の予選落ち確定・・・。

本当にほんのちょっとの不運がこれでもか!というばかりに押し寄せてきて、この0.227秒足りずに涙を呑むことになったのです。

もし、前日にクラッチ交換なんかしていなければ・・・
もし、オイルシールを入れ忘れないように念を押すのを忘れていなかったら・・
もし、あと15分路面が乾くのが早かったら・・・
もし、あと30分早くエンジンを掛けていたら・・・
もし、リアタイヤのハブをパドックまで持ってきていたら・・・
もし、あと1分早く油井君にそのハブを取りに戻ってもらうようお願いしていたら・・・
もし、小野君の言うことを聞いて赤旗中断中にフロントタイヤを交換していたら・・・
もし、あの最後の周にトップライダーたちにパスされることが無いタイミングでコースインできていたら・・・

この中のひとつの「もし」が、実現しただけで、多分この110%はクリアできたと思います。

もちろん初日11番手という好位置から始まったこの全日本筑波がこういう形で幕を降ろしてしまったことは悔やんでも悔やみきれないのですが、ある意味ここまで歯車が合わないとこんな風にも思うことが出来るのです。

「このレース、もし決勝走ってたら、俺死んでたな・・・」

そしてこの後、天気は急激に回復し各クラスの決勝レースが始まる頃には見事なまでの五月晴れで、この朝一番のどんよりした曇り空のもと繰り広げられたドタバタ劇は夢の中での出来事のような不思議な錯覚に陥ってしまいそうでした。

そして自分の走るはずだった全日本GP250のレースを久しぶりに外から観戦モードで見ながら、まだ自分がその中に入ることの出来なかった頃のことを思い出していました。

まだ走ることが楽しくて楽しくて仕方が無かった頃のあの感じです。

最近は妙なプレッシャーと戦いながらのレースが続いているのですっかり忘れかけていた感情です。

今回のレースは、ある意味レースの神様の意地悪でもありましたが、

「ここらあたりで一回レースを始めた頃の気持ちを思い出してごらん・・・残りのレースもういくつもないんだから楽しまなきゃもったいないよ」

というメッセージだったような気にもなってきます。

その清清しい五月晴れの天気も手伝ってか、筑波を後にするころには不思議なほど気持ちが吹っ切れていました。

そして6月の筑波の地方選手権に緊急エントリーを決意、そこで今回走ることの出来なかった悔しさを思いっきりぶつけてくるつもりです。

・・・NEXT・・・

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