つかの間のシーズンオフも終え、またあの激闘の日々が始まりました。 シーズンオフの間に一旦OFFにした闘争心にもう一度火を入れるわけです。 コンマ何秒を削りとるためのありとあらゆる試練に立ち向かっていく闘争心を取り戻すことができるのか・・・。 マシンは完璧です。 全バラにして、ボルト一本一本から洗浄してから組み立て直して最高のコンディションにしてあります <3月8日筑波シーズン初走行> 昨年の初走行同様、この時期にしては暖かく絶好の「初乗り日和」に恵まれ、いきなり1分0秒台をマーク。 手持ちの中で一番ボロいタイヤを履いて、しかも絶対に転ばないように安全マージンたっぷり取って走って、自己ベストの1秒落ちです。 やはり昨年感じた手応えは間違いではなかったようです。 <3月29日筑波練習走行2回目> 一転してこの日の走行は気温も上がらず、しかも強風吹き荒れるという最悪のコンディション。 当初新品タイヤで今期一発目の全開走行と行きたかったところですが、このコンディションで新品タイヤ投入はちょっともったいないので、前回使ったタイヤでそのまま走ることにしました。 とりあえず条件的には良くないので、前回同様さらっと走って1分0秒台・・・を目指しますが、そこそこペースアップしたところでタイムは2秒台。 そこからかなり頑張って、本当に転んでもおかしくないくらい頑張って、なんとか1秒台にはかすりますが、いきなり暗雲立ち込める嫌な状況に追い込まれてしまいました。 <4月7日筑波選手権 公式練習 > いよいよ今シーズン一発目のレースウィークに突入しました。 実はこの日の2日前の水曜日に一度練習のため筑波に出向いたのですが、出走前に雨が降り出して走行をキャンセル。 ということで、前回強風下の走行で全くタイムが出なかった悪いイメージを引きづったままレース前日を迎えることになってしまいました。 「あれは絶対に風のせい・・・俺が行けてないんじゃない!絶対に風のせいだ!」 この1週間、ずっと自分にそう言い聞かせながら悶々とした日々を過ごしてきましたが、それが正しかったことを証明するためにはなんとしてもここでビシっとタイムを出さなくてはなりません。 【公式練習1本目】 今回の公式練習はJSBクラス(排気量1000ccクラス)との混走練習になりました。 自分たちのバイクは250ccなので排気量が4倍のバイクと一緒にコースを走らされるわけです。 これに完全にやられました。 現実的にいって250ccのバイクで1000ccのバイクを抜くのは「超」が付くほど至難の業です。 もともとパッシングが上手くない自分にとっては「不可能」と言っても過言ではないのです。 なのでこの練習も、JSBマシンに追いついては、こちらがペースダウンして、一旦間合いを取って、そこからとりあえずペースアップ。 それでもすぐに追いついてしまうので、もう一度間合いを取るためにペースダウン。 ちなみにこの1本目のラップタイムはこんな感じです。 5周目:1分15秒111 (間合いを取るためスロー走行) どうにもお手上げです。 全力走行チャンスは間合いを取るためにたっぷりスロー走行した後に、毎回たったの1周だけ。 ゆっくりコースを走った後、次の周いきなりペースを上げろ・・・と言われてもそれはそれで難しいのです。 ただそれでも0秒台には入れたいところでした。 そのくらいじゃないと今年の目標達成は厳しいわけです。 【スタート練習】 今回筑波選手権恒例のスタート練習は練習走行1本目と2本目の間の昼休みに実施されました。 昨年後半から改善されたスタートを再度確認するためにこのスタート練習に参加。 結果は2本スタートして、2本ともまあまあ普通のスタート。 【公式練習2本目】 先ほどの走行までフロントブレーキディスクは、昨年のSUGOでは全くだめだった軽量タイプのものを使っていましたが、この走行で通常タイプのものを試してみることにしました。 この軽量タイプのディスクは、切り替えしや倒し込みが軽くなる利点はあるのですが、あまりに軽すぎてコーナリング中にフロントタイヤの接地感がやや希薄になる傾向があります。 昨年筑波で59秒出したときはこの軽量タイプのディスクは使っていません。 ただ昨年の筑波最終戦の練習で中古タイヤであっさり0秒フラットを出したときと、今年の初走行でこれまたあっさり0秒台をマークしたときに使用していたのは、この軽量ディスクでした。 なので今年はここまでこの軽量ディスクを使ってきたのですが、ここでもう一度通常ディスクに変更して、どちらを使うか最終決定したいと思ったのです。 やはりコースインしてすぐに以前の懐かしい安定感を感じることが出来ます。 「そうそう、これこれ!やっぱりこのくらいの安定感がないと思いっきり攻めれないんだよな!」 「これはいよいよタイム出るな!」 と意気込んで走り始めたのですが、コースインして3周目と4周目のタイムが前方クリアな状態で1分2秒台前半という感じで、思っているほどタイムには効いてきません。 (うーん、1秒台くらい入ってるつもりで走ってるんだけどなあ・・・) そこから1分22秒台までペースを落としてクリアなポイントを探します。 再びペースアップを試みますが、その周も1分2秒フラット。 かなり追い込まれます。 再び間合いを取るためにスロー走行していると、後方から今回レースの最大の強敵・I選手の姿が視界に入ってきます。 (ちょっとI選手のお手並み拝見・・・) ということで、I選手に抜かれた後、こちらもペースアップして追撃体制に入ります。 ただ例によってその直前まで超スロー走行しているため、こちらも一気にはペースを上げられず、案の定ちょっとづつ離されていく感じがあります。 (ここで逃がしたら駄目だ!絶対についていく!) とちょっと気合を入れたことは入れたのですが・・・。 (あらっ!!!) なんとCXコーナーの切り替えしであっさりフロントタイヤの感触が無くなりそのままスリップダウン。 タイムを出す以前の段階での転倒に我ながら呆然・・という感じです。 結局そのままこの日の練習は終了。 とうとう浮上のきっかけを全く得ることなく、明日のレース本番を迎えることになってしまいました。 <4月8日筑波選手権 予選・決勝> とにかく依然として調子は上がってきません。 若干投げやりな感じになりそうでしたが、ここは気を引き締めるためにも新品ピストンと新品プラグ、そしてほぼ新品のタイヤを贅沢に投入して、できる限り最高の状態で予選に挑みます。 とにかく言い訳できない状態にして、思いっきり走ってみて自分の本当の調子を知りたかった・・・というのがその目論見です。 これで駄目ならシーズン始まったばかりながら、自分のレース活動に終止符を打つ!くらいの気合で予選に臨みます。 【公式予選】 そういう気合で臨んだ予選ですが、いかんせんこの日の筑波も厚い雲に覆われ、気温も上がらずコンディションは良くありません。 コースインして4周目、5周目とそれなりペースを上げ始めたところのタイムがともに1分3秒台。 (うーっ、この3秒台っていうのがいただけないんだよなあ・・・) 昨年と言わず一昨年あたりでも、この辺では普通に1分1秒台くらいには入れてきていたはずです。 そこからペースアップして次の周が1分2秒495。 (あーっ、やっぱりこんなところで足踏みしちゃって、ホントにどーしようもねーな) ようやく次の周で1分1秒801 その次の周で1分1秒448 と少しづつペースは上がってきますが、この時点でそれなりに頑張っている状態。 自分の中のイメージでは、もう完全に0秒台中盤くらいは出ていてほしいくらいのペースになってきています。 自分のイメージと実際に出ているタイムとのギャップが約1秒丸々ある感じです。 (これでどうだあ!もう全部出し切っちゃって、後は何にも残ってねーよ!) っていう気合で帰ってきたタイムでようやく1分0秒994 今年の初走行以来、約1ヶ月ぶりの0秒台です。 ただとにかくこんなタイムで予選を終わるわけにはいきません。 さらにペースアップを試みますが、このあたりから前方にペースの上がらないバイクを出現し始めたので、一旦ペースダウンして間合いを取ってから、最後のタイムアタックに勝負を掛けます。 このペースダウン中に、ちょっと自分の予選順位が気になったのでちらっと電光掲示板のほうに目をやると、一応ゼッケン37番が一番上に掲示されています。 (あらっ、一応こんなタイムでも予選暫定トップなんだ・・・I選手もタイム出てないのかな) (いや、I選手がこんなタイムで終わるはずがない。予選終了までもう一回アタックしておかないと・・・) と思った矢先、早々に予選を切り上げたのかスローダウンしているI選手を発見。 (これでポールポジションは確定・・・) ただ、なにしろこんなタイムで予選を終わるわけにいかないことには変わりが無く、その次の周に渾身のタイムアタック。 しかしこれも1分0秒906に終わり、予選終了となってしまいました。 終わってみれば予選はトップタイム。 長いレース人生で2度目となる貴重なポールポジションを獲得したものの、タイムがこれでは全く浮かれることはできません。 【決勝レース】 やれることはすべて出し尽くした予選で、1分0秒台にかするのがやっと。 この予選での唯一の言い訳できる要因は10℃を下回った気温と低い路面温度だけです。 まあ、決して良いコンディションというわけではありません。 ただ、それでも0秒の前半くらいまでは出しておきたいというのが本音ではありますが、あとは決勝レースまでにもう少しコンディションが回復することを期待するだけです。 そしてその期待に応えるかのように決勝レースの直前に晴れ間が出現。 気温と路面温度もぐっと上がってきそうな雰囲気になってきました。 (きたきた!路面温度さえ上がってきたら復活の59秒台を叩き出してやる!) 決勝レース前にテンションが良い感じで上昇してきます。 ところが、いよいよスタート前進行が始まり、ライダーのブリーフィングが始まるという段になって、いきなり空が曇り始め雨がぱらぱらと落ちてきてしまったのです。 「うそでしょ・・・」 この雨は明らかに通り雨といった感じですが、なかなか通り過ぎてくれません。 とりあえずサイティングラップにはレインタイヤでコースインして、路面状況を確認します。 路面は濡れているような、それほど濡れていないような感じで、おそらくこのままなら大抵のライダーであればドライコンディション用のスリックタイヤが選択するような雰囲気です。 ヘルメットのシールドに当たる雨粒もそんなに多くは無い感じ。 ただ、ほんのちょっと濡れている路面をスリックタイヤで怖い思いして走るのは個人的には避けたいので、よほど乾いている感じでない限りレインタイヤで走るつもりでいます。 かなり強い意志で、頭の中ではレインタイヤを選択するつもりでいます。 ところが、それほど強い意志でレインタイヤで行こうと思っている自分が、悩むくらい路面のコンディションは微妙な感じなのです。 1周回ってきて予選1番手のグリッドにバイクを付けるなり、今回のレースを手伝ってくれているチームメイトの小野君にヘルメット越しに状況を伝えます。 「どっ、どうしよう!スリックかレインか!微妙すぎて判断不可能!!!」 とにかくどうにも判断できないくらい微妙なコンディションだったのです。 スリックタイヤに交換するには、グリッド上の選手紹介の間の短い時間しかありません。 グリッドについた時点で判断できなければ、選手紹介中のタイヤ交換は間に合いません。 あとはそのまま今履いているレインタイヤで出走するか、もしくはポールポジションの座を放棄して、ピットロードに戻ってタイヤを交換するしか選択肢は残されていません。
ということで頭の中が真っ白の状態に陥っていたのですが、ここで駄目押しのひと降りがあり、レインタイヤでの出走が確定してレースがスタート。 レース前の混乱のためスタートは集中できずに大失敗。 とりあえずこの時点での路面状況は完全にウェットです。 両方レインタイヤを選択したアドバンテージを利用して、スリックタイヤを選択したライダーや、前後でスリックとレインを別々に選択したライダーを序盤に交わして4番手まで浮上します。 その先を見ると、まずトップのライダーは独走態勢を築き始めているのがわかります。 2位と3位のライダーがホームストレート1本弱くらい前方でバトル中。 まずはこの2位争いに追いつけるかどうか・・・という展開となります。 序序に路面状況にも慣れ初めてペースを上げていくのですが、同じように前の集団もペースが上がっているようで、簡単に追いつく気配はまだありません。 一瞬諦めそうにもなりましたが、このオフシーズンに何度かやってきたオフロードバイクでのトレーニングを思い出して、必死で前の集団を追いかけます。 (すべるのが当たり前のオフロードバイクでトレーニングしてきたんだ!絶対に負けない!) するとレース中盤でなんとかこの集団の後方につけることが出来て立て続けにパス。 ここで2位に浮上します。 この時点でトップのライダーとはホームストレート一本分。 (これはもう無理か・・・) その頃になると先ほどの通り雨はすっかり通り過ぎて、空は抜けるような青空が広がっています。 路面もすっかり乾いてしまっています。 つまり状況はいわゆる「レコードコンディション」=最高のタイムが期待できるすばらしいコンディションになってしまっていたのです。 待ち望んでいたこのすばらしいコンディション下において、なぜかレインタイヤを履いてコース上にいる不思議さはなんとも言えないものがありました。 「あーあ、スリックタイヤだったら今期の自己ベストくらいは出せたんだろうなあ・・・」 こんなに乾いた路面をレインタイヤで走ったことがないので、タイヤの状況も不安になります。 きっと見たことも無いくらいにボロボロになっているはずです。 それを考えるとそれ以上のペースアップには躊躇してしまいます。 いろいろなことを考えながらもレースは終盤。 そこで後方からやってきたライダーにずばっと抜かれます。 I選手です。 I選手はリアタイヤにはレインタイヤを選択していましたが、フロントタイヤにはスリックタイヤを選択していました。 そのため路面が濡れていた序盤はペースが上げられず後方に沈んでいましたが、路面が乾きはじめてからは前後レイン組とのペースが逆転し、猛然と追い上げてきていたのです。 抜いてきたそのままの勢いでぐんぐん差を付けられて行くのを見送りながらも、これはもう成すすべはありません。 この時点で3位。 ただこの表彰台圏内である3位は絶対に死守したい。 しかしさらに後方には前後スリックを選択したライダーもいたので、彼らに追い上げられたらひとたまりもありません。 「来ないでえ・・・」と祈る気持ちで走り続けようやくチェッカー。 この何がなんだか分からない波乱のレースは幕を閉じました。 結局5月の全日本に向けての浮上のきっかけを残すことの出来ないレースとなってしまいましたが、ある意味この荒れたレースを完走したことはほんのちょっとだけ自信につながりました。 こういうレースを捨てずに一生懸命走る・・・今年はなかなか最高のコンディションを与えてくれないレースの神様へのちょっとしたアピールができたかな?という感じです。
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