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大舞台・・・(2005年9月 全日本選手権 鈴鹿RD)

今シーズン3回目、そして最後の全日本のレースウィーク突入です。

「聖地・鈴鹿」の全日本選手権・・・そこは我がレース人生最大の「晴れ舞台」になるはずです。

いままでホームコースのみでスポット参戦してきた全日本ですが、今回はいわば初めて敵地(アウェイ)に乗り込む全日本です。

もちろん走りなれてないコースなので今まで惨敗してきたホームでの全日本以上に苦戦することは「想定の範囲内」なのですが、ホームコースではないがゆえの気楽さが有利になる可能性もあります。

泣いても笑っても今シーズン最後の全日本がいよいよ始まりました。

今回のレースウィーク直前で一番頭を悩ましたのはエンジン仕様の方向性です。

日本が世界に誇る「超高速サーキット」の鈴鹿は他のサーキットと比較にならないほどエンジンに負担が掛かっているはずです。

今までの鈴鹿走行では、とにかくコースに慣れなければいけなかったので、エンジントラブルを避けるためにも、極力エンジンに負担が掛からない仕様(=エンジンパワーを抑えた仕様)で走りこんできました。

しかしながら今回はいよいよエンジンのほうも追い込んでいかなくてはなりません。

前述のとおり鈴鹿は「超高速サーキット」です。

これはすなわちエンジンパワーで結果が大きく左右されるサーキットということでもあるのです。

考えられる仕様の方向性は2つです。

その1:エンジン自体は負担の掛からない仕様にして、キャブレターのセッティングで追い込んでパワーを出していく。

その2:ある程度の負荷は承知の上でエンジン自体をパワー優先の仕様にしておいて、キャブレターのセッティングはあまり追い込まない。

先週の事前練習がメカニカル・トラブルのため空振りに終わったので、このエンジンの仕様の方向性が決められなかったのですが、とりあえず「その2」の方向性でトライしてみることにしました。

【9月23日 公式練習】

<1回目>

しっかり走るであろうエンジンにちょっと濃い目のキャブセットでコースイン。

前回までとはミッションプランも変更しているのでそのあたりもチェックポイントになります。

この走行で一気に2分20秒は切ってしまいたいところでしたがベストタイムは1分21秒093

思惑より1秒ちょっと遅れていますが、先週の走行では2分22秒しか出ていなかったので、まずまずと言った感じかもしれません。

<2回目>

1回目の走行でいまひとつタイムが伸び悩んだので新品タイヤを投入してこの2回目の公式練習に挑みます。

1回目で余裕のあったキャブセットも1ランク絞ってみます。

タイヤが良くなって、さらにキャブセットも1ランク進めて

「今度こそ2分20秒切り!」

と意気込んでコースイン。

5周目で2分21秒台に突入するものの、そこから連続9ラップもの間2分21秒で足踏み走行が続きます。

後半体力の消耗から集中力が切れ始めタイムアップできずに走行を終了してしまいました。

この走行のベストは2分21秒133

中古タイヤで走った1回目のタイムを上回ることができませんでした。

それにしてもちょっと気になったのが、バックストレートエンドで他のバイクにパスされる機会が多かったことです。

もちろんバックストレート前のスプーンカーブが速く立ち上がれていないことも原因のひとつだとは思うのですが、どうもそれだけではないような抜かれ方なのです。

6速ギアを低速に振ったことが裏目に出ている可能性があります。

早速、走行後にミッションをばらし、6速ギアを高速に振りなおして明日の公式予選に備えることにしました。


レースウィーク初日の整備風景

この日の走行で目下ライバル視していたライダーたちは2分18秒前後のタイムをマークしています。

現時点で3秒先のタイムは見えてきませんが、1秒先のタイムなら見えています。

この1秒先のタイムが出れば、その時にはさらにその1秒先のタイムが見えてくるはずです。

焦りは募りますが、まずは目先1秒づつでもタイムを削り取っていくことが大事です。

【9月24日 公式予選】

前回SUGOと同様、今回の鈴鹿も公式予選が1回しかありません。

今回は50分x1回です。

百歩譲って1回しかない予選は我慢するとして、この50分という予選時間がくせものです。

時間の経過とともに体力とタイヤは消耗していくのでタイムは出しにくくなっていきます。

ただ後半はガソリンが減ってきてマシンが軽くなってくるため、その点では逆にタイムが出しやすくなる。

50分という長い時間をどう使うのか、どのタイミングでタイムアタックに最適な条件を作りだすのか、このあたりの作戦が公式予選の成否のカギを握ることになりそうです。

今回は次のような作戦でいくことにしました。

まず最初の6周程度は軽めのガソリンと中古タイヤでそれなりのタイムアタック。

その後ピットインして、前後タイヤを新品に交換し、ガソリン補給&ライダーの休憩。

残り25分で再度コースインし、約10周前後のフルタイムアタック。

という感じです。

【公式予選】

コースインしてまず、昨晩変更した6速ギアの変更が当たっているがわかります。

高速側に振ったにもかかわらずバックストレートでは昨日の公式練習の時と同じくらいかそれ以上の回転数まで回っています。

まず前半の中古タイヤでの軽めのタイムアタックで5周目に2分20秒726をマークし、昨日のタイムを上回ります。

予定ではこの次の周にピットインなのですが、ピットインするかどうかは、ショートカットのピットロード入り口までのコース前半セクションの走りで決めることにします。

この区間で失敗したらそのままショートカットしてピットイン。

うまく走れてる感じがあったら、そのままもう1周タイムアタックというわけです。

その前半セクション。

いい感じで走ることができています。

そのままショートカットのピットロードをやり過ごしてタイムアタック継続することにします。

ところがそのピットロードをやり過ごした先のデグナーカーブでスローダウン中のバイクに引っ掛かってタイムアタック失敗。

ショートカットしていればまわる必要のなかった後半セクションを走って、約2分弱のタイムロスして正規のピットロードからピットインします。

ここでタイヤ交換とガソリン補給、そしてライダーの休憩。

予定から若干遅れて残り23分を切ったところで再度コースイン。

いよいよ最後のタイムアタックです。

再コースイン後、2周目で再度2分20秒台をマーク。

前方にちょうど2分16秒台くらいは出してきそうな中堅ライダーがコースインしてくる姿を発見したので、一旦こちらもペースを落として、そのライダーの後ろにつけます。

普段自分はあまりやらないのですが、速いライダーに引っ張ってもらって「びっくりタイム」をたたき出す作戦です。

ところがこのライダー、なかなかペースアップする気配がなく微妙なペースで走行を続け、そのライダーの真後ろにつけている自分もそのペースの走りを強いられます。

そうこうしている内に、他のライダーに間に入られてしまったので、「このライダーに引っ張ってもらって”びっくりタイム”作戦」を断念。

さらに一旦ペースを落としてクリアラップをつくり、「自力でタイムアタック作戦」に切り替えます。

そこからペースを上げて2周目のタイムが

2分19秒991

初めて2分20秒を切る自己ベストの更新です。

「きたきた!まだまだいける!目指すは一気に18秒台!」

ここで一発渾身のタイムアタックに入ります。

ところがこの周のタイムが、

2分19秒959

「うっ、さっきの周とほとんど変わらない・・・」

ここでちょっとがっくりきたのが影響したのか、その次のタイムが

2分20秒381

「うわっ、タイム落ちちゃった・・・」

ホームストレートで掲示されている残り時間はこの時点で約2分、おそらく次の周が最後のタイムアタックになると思われます。

「ここで集中力切らしちゃ駄目だ!あと1周がんばれ!」

と自分を叱咤しながら1コーナーに進入。

ところが、その先のS字でまたしてもスローダウン中のバイクに引っ掛かりタイムアタック失敗。

公式予選は終了してしまいました。

正式結果は2分19秒954予選23番手

もうちょっといきたいところでしたが、かろうじて最低目標の2分20秒切りは達成したので明日の決勝に期待という感じです。

【9月25日 決勝】

前日の天気予報によると、決勝当日の天気は午前中雨、午後から曇りという微妙なものです。

ところがこの予報は見事に外れ、決勝当日の鈴鹿は雲ひとつない秋晴れとなりました。

しかしながら風が強い。

朝から鈴鹿サーキットには突風とでもいうべき強風が吹き荒れています。


強風の雰囲気が一番でている写真です。

<フリー走行>

まず朝一番で15分間のフリー走行を走ります。

実は昨日の予選が終了した時点で、このフリー走行は一発狙っていました。

本来であれば午後の決勝に向けて、決勝で予定している18リッターくらいのガソリンを積んで、フルタンク状態でのテストなどをしなければならないところですが、15分間という短い時間でチェッカーを受けるこのフリー走行は、逆にコースイン直後から少ないガソリンで走ることのできる珍しいチャンスなのです。

集中力や体力を消耗していないコースイン直後から、軽い車重で思いっきり攻めてやろう・・・という目論みです。

しかしながらこの強風。

残念ながらこの条件では自己ベストの更新は難しいと思われ作戦は変更。

ただ本来やるべきフルタンクテストはせずに、とりあえず強風の影響だけを確認してくることにしました。


フリー走行へ出撃!

やはり完全に追い風となるメインストレートとバックストレートエンドは思った以上にスピードが出ているようです。

昨日と同じタイミングで1コーナーや130Rに進入しようとするとスピードを落としきれずに飛び出しそうな感じがあります。

その一方で向かい風となるそれ以外の区間では、スピードの乗りが悪く、下手すると昨日まで思いっきりブレーキングしていたコーナーでもノーブレーキで進入できちゃうんじゃないか?っていうような雰囲気です。

走りのリズムが全く変わってしまうので予想どおりタイムは伸び悩み2分21秒台にとどまりますが、これでも公式結果は18番手。

もちろん他のライダーはフルタンクテストなどを行なったりしているでしょうから参考にはなりませんが、できれば昨日の予選でもこのくらいの順位につけられれば大分気分が良かったのですが・・・。


今回「島村車」を担当してくれた仲間たち


<決勝>

他のサーキットに比べアクセル全開時間の長い鈴鹿サーキットは使用するガソリンの量が桁違いです。

決勝17ラップを走りきるためのガソリンは、どう少なく見積もったとしても18リッターは必要です。

通常の練習走行や地方選手権の決勝レースなどで使用するガソリンは9リッター程度なので、ちょうど2倍のガソリンを積んで出走することになります。

重さにしていきなり約10キロ増です。

今回はこのフルタンクに加え、「強風」というおまけまでついています。

決勝を前にしてこの「フルタンク+強風」に少なからず緊張はしていたのですが、余談ながら決勝前に他の関西圏のチームとちょっとしたいざこざがあって、その怒りが収まりきれずに実は闘争心は最高潮に達していたのです。

「そうだよなあ・・・闘いにむかう前ってこんな感じじゃなきゃいけないよなあ・・・レース前に誰かと喧嘩するって実は悪くないかも!!!」

久しく忘れていたことを取り戻した感じがしてきます。

さあ、いよいよ最後の全日本の決勝レースに向けてスタート進行が始まります。

まずはサイティングラップで「フルタンク+強風」の影響を確認。

フルタンクで車重が重くなり、ストレートエンドではスピードコントロールが難しそうですが、逆にその車重のおかげでコーナリング中はタイヤのトラクションがばっちり感じられて悪くなさそうです。

というか、そんな風に自分に「大丈夫!大丈夫!」と言い聞かせて1周走って、仲間の待つグリッドに到着します。


「さあ、これから人生最大の大一番だ!」

「最後になるかもしれないこの風景を一生忘れないようにしっかりと目に焼き付けておこう!」

そんなことを考えていると気持ちがスッと落ち着いてくるのを感じます。

グリッド上での選手紹介が終わり、今までこのレースを手伝ってくれた仲間たちが退去。

先ほどまでの賑やかだったグリッド上に、闘いに向かうライダーたちだけが取り残されます。

最後のウォーミングアップラップを1周まわって再度グリッドについて、前方のオフィシャルが退去、そしてレッドシグナルが点灯。

このレッドシグナルの消灯と同時にレースがスタートします。

レッドシグナルの消灯・・・それと同時に全ての意識がクラッチを操作する左手に集中するのを感じました。

実はこの感覚ははじめてのものでした。

過去これまでのレースではレッドシグナル消灯した瞬間、どちらかというとアクセル操作をする右手に意識がいっていたような気がするのですが今回は左手です。

全神経が集中された左手は、クラッチを通じて伝わってくる駆動力を完璧に受け止めています。

クラッチミートと同時に絶妙な動き出しをみせたマシンはあっという間にパワーバンドに入り完全な加速体制に入っています。

過去最高のスタートです。

最初の加速で前方1列分のライダー数台を喰って、そのさらに1列前方のライダーが見る見る近づいてきます。

「さあて、右からいくか?左からいくか?どっちからでもいけそうだな・・・」

1コーナーに向かうまでの間不思議なほど落ち着いています。

いや、ちょっと落ち着きすぎてしまったのかもしれません。

完全に抜けると思ったその2列前のライダーとの差がその先で思ったより縮まらず

「あれ?抜けないかな?」

と思った瞬間、ドバドバドバっと逆に10台くらいのバイクが後方から自分をパスしていくではありませんか。

落ち着きすぎて3速あたりまでシフトアップした後、さらに4速・5速とシフトアップするのを忘れてしまっていたのです。

いつも走っているサーキットはスタート直後1コーナーまでに3速まで入れば良いほうです。

しかし、鈴鹿サーキットはスタート地点から1コーナーまでの距離が長いので、5速くらいまで入れなければなりません。

しかもそれを先ほどのウォーミングアップラップの段階で少なくとも5速まで入ることをわざわざ自分で確認していたにもかかわらず、あまりのナイススタートでそのことを忘れてしまったようです。

結局1コーナーに進入した時点では順位を最高尾から数えて4番目まで落としてしまいました。

目の前にいるライダーたちは前回の全日本SUGOと同じような面々です。

まず2周目のバックストレートエンドで一台をパス。

そこからちょっと離れた2台からなる集団を追います。

この集団にはアッという間に追いつきますがなかなか前に出ることできません。

それにしてもライダーの調子は絶好調です。

前が詰まっているのでタイムは対したことありませんが、コーナーひとつひとつを取ってみれば、

「なんで昨日の予選でこの走りができなかったんだろう・・・」

って思うほど攻めることができます。

そこから5周後のホームストレートエンドから1コーナーの進入でもう一台をパス。

さらに前を行くライダーを追いかけます。

全体的な体力・集中力はまだまだ持ちそうだったのですが、残り6周くらいとなったところで、突然クラッチ操作している左手に違和感を感じはじめます。

疲労からかクラッチ操作をしている左手の感覚がなくなってきてしまったのです。

毎回コーナー進入時のシフトダウン時に、左手でクラッチ操作をするのですが、その操作をしている感覚が全くありません。

「今のクラッチ操作でギア落とせたのか???」

そんな不安を覚えながらコーナーに入っていくような状況です。

ここからペースががくっと落ち始めました。

残り周回4ラップに入ったところで先ほど抜いたライダーにパスされて、そのままずるずると引き離されていきます。

このあたりで正直意識はもうろうという感じです。

残り周回あと2周。

この周に青旗(自分が周回遅れになっていることを知らせる旗)の掲示がなければ、トップと同一周回でゴールすることができます。

「ここまできたら、せめて周回遅れにだけはなりたくない!」

とにかく気を許せば薄らいでいきそうな意識をなんとかつなぎとめて、バイクにしがみついて必死でこの1ラップを走りきります。

コントロールラインに戻ってくると「残り1LAP」の表示。

なんとか周回遅れにはならずに済んだようです。

そして最後の1周を走りきってチェッカーフラッグ。

全日本参戦通算7戦目、うち完走3回目にして初めてトップと同一周回でチェッカーフラッグを受けることができました。

正式結果は22位。

レース中のベストタイムは2分19秒818

目標としていた18秒台や17秒台には届きませんでしたが、ほんのわずかに自己ベストを更新することができました。

思い起こせばレースを始めてから10数年。

現役ライダーのうちにTVでしか見たことの無い鈴鹿を思いっきり走ってみたい。

そんな気持ちで昨年中ごろから本格的に鈴鹿に遠征するようになったわけですが、その「鈴鹿を思いっきり走る!」という想いだけは達成したような気がします。

ほんの2年前までは自分が全日本の鈴鹿を走っている姿を想像するのは難しかったのですから。

ただこのレースを最後の鈴鹿にするわけにはいきそうにもありません。

まだまだこのサーキットにはやり残したことがあります。

12月の鈴鹿選手権にエントリーして、そこでの目標はずばり「優勝&コースレコード樹立」です。

・・・NEXT・・・

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