今年のレース活動継続の目標の一つには、この参戦記最初のころからずっと書いてきた59秒台をマークすることがあげられます。 前回の筑波の地方選手権で自己ベスト1分0秒3をマークしているので、あと0.3秒ちょっと。 目標達成まであと0.3秒ちょっとのところまでやってきました。 <4月30日筑波練習走行> 全日本筑波のレースウィークの2週間前、筑波サーキットで最後の練習走行を行ってきました。 実はこの日、昨シーズンから前回のレースまで使ってきたブリジストン製のタイヤではなく、ダンロップ製のタイヤを持ち込んでのテスト走行です。 よほどのことがない限り、シーズン途中、しかも大本番である全日本選手権の直前でタイヤメーカーを変更するということはありえないのですが、敢えてタイヤメーカーを変更してこの練習に臨んだわけです。 タイヤメーカーを変更すれば、極端な話、サスペンションのセッティングやライン取りなどいろいろなことが変わってきてしまう可能性もあります。 この期に及んでは、新しいタイヤに合わせてサスペンションのセッティングやバイクの乗り方など変更していく時間はありません。 なのでちょっと乱暴な考え方ではあるのですが、 ■ 一発このダンロップタイヤを履いてみて、いきなり自己ベスト付近をマークできれば、そのダンロップタイヤの可能性に賭けてみる。 ■ 逆にどんなに感触が良くても、タイムに跳ね返ってこなければ当初の予定どおりブリジストンタイヤ使う。 という方針でテストしてみることにしたのです。 そしてその結果は・・・。 コースインすると同時にオートシフターにトラブルが発生し、苦手なマニュアルシフトでの走行を強いられます。 またゴールデンウィーク中のため、コース上が結構混雑していてなかなかベストの走りが出来ません。 コースインして9週目、クリアラップを作るためにラップタイムを一度1分10秒台まで落として、その後マニュアルシフトと格闘しながらちょっとだけ頑張ってみて帰ってきたタイムが・・・ 1分0秒150 「えっ、1分1秒150じゃなくて・・・???」 車載のラップタイマーを何度見直しても1分0秒150は1分0秒150です。 タイヤが大きく変わって何のセットアップもせずにあっさり自己ベスト更新です。 「ものは試し・・・」というのはまさにこのようなことを言うのかもしれません。 これで5月の全日本筑波に向けて最高のカードを手にすることができました。 【全日本選手権 筑波 1日目(公式練習)】 いよいよ今シーズン最初の大一番・・・全日本筑波のレースウィークが始まりました。 前回の練習走行でさらっと走って1分0秒15という自己ベストをマークしてライダーは絶好調。 しかしながら今レースウィークは予報によると3日間とも曇りor雨で、気温も異常に低くなりそうです。 このレースウィーク3日間が雨に祟られるようなことがあれば、目前まできた59秒台突入への道は完全に閉ざされます。 <公式練習1回目> 前回の練習走行で若干気になった部分を補正するために若干サスペンションセッティングを変更してコースインします。 その『前回気になった部分』というのは解消されたのですがタイムは若干伸び悩み1分0秒399。 前回のほうがさらっとタイムが出せていたので、一度ピットインしてセッティングを前回と同じ状態にセットし直して再度コースイン。 しかしやはりその『前回気になった部分』が顕著に再発し、 「ありえねー、よくこんなんでタイムだしたもんだ!」 というほどの違和感を感じます。 次の走行ではセッティングを元に戻して走ることにします。 ちなみにこの公式練習1回目の正式結果は予想を大きく上回り12番手につけます。 これが予選順位だったら大変なことになりますが、初日1本目の結果はホームライダーが有利なので参考程度にしておきます。 (とは言いながらも全日本のリザルトで暫定12番手という記録はかなり嬉しいものでした。) <公式練習2回目> このレースウィークで波に乗れるか否かは、如何に早いタイミングで目標の59秒台に突入できるかどうかにかかっています。 自分の場合、今のように目標クリア寸前のタイムで留まってしまうと、ライディングにしても、マシンのセッティングにしても、冒険ができなくなります。 現状の方向性・延長線で目標をクリアしようとするからです。 これは非常に良くない循環です。 本当はもっと色々なセッティングやライディングを試してみたいと思っているのですが、それができなくなります。 逆に目先の目標さえクリアできれば、さらなるタイムアップに向けて様々なセッティングやライディングを試すことができて、それが旨くはまれば一気にブレイクする可能性がでてきます。 もちろん最初からこの目先の目標にとらわれずに冒険すれば良いだけなのですが、これは自分の悪い癖だと分かっていながらも直すことができません。 今の自分にとって「目標59秒台!」というのは呪縛以外の何物でもないのです。 さて、この公式練習2本目の結果ですが、1本目の最初と同じセッティングでコースイン。 終始「路面を濡らすほどではない」が「ヘルメットのシールドやカウルのスクリーンに水滴が付く」くらいの微妙に弱い雨が降っています。 人一倍こういう微妙なコンディションに弱い自分ですが、自分自身に「大丈夫!」と言い聞かせながらコースを攻めます。 10周目:1分0秒287 ときて次の周、ヘルメットのシールドに付く水滴の量を気にしながらも、「お願い!59秒台入って!」と祈りながらいつもよりも最終コーナーを頑張って戻ってきたラップが、 14周目:1分0秒053 (自己ベスト) 「ちっ!あれでも入んねーか!それなら次でぶち込んでやる!」 とさらに全開走行を続けますが、第一ヘアピンの立ち上がりでリアタイヤがズルッと滑ってアタック断念。 ここでちょっと我に返って辺りを見回すとコース上に他車の気配が全くありません。 「そう言えばさっきまでの数周はバックストレートに出るたびに、前方を走るバイクはどんどんピットインしてたな・・・あれっ、もしかしてみんな雨が強くなってきたんで走行止めてるの???」 その周ピットロードに戻るとほとんどのライダーが様子見状態。 今回メカニックをしてくれている仲間の話によると自分が走っていた時点でコース上には自分を含めて2〜3台しか走っていなかったとのこと。 「結構雨が落ち始めてたのに全然ペースダウンする気配がなかったからヒヤヒヤしたよ」とはその仲間の談。 この公式練習2回目の正式結果は2つ順位を落として14番手。 それでも結構凄いところに付けてますが、それにしても「59秒台の呪縛」からの解放はならず、精神的に追いつめられる状況は続きます。 【全日本選手権 筑波 2日目(公式予選)】 10日前にダンロップタイヤを初ライドしたときの感触でいうと、この時点で59秒台中盤は軽くマークしている予定だったのですが、現実はそうは甘くないようです。 「59秒呪縛」から解放されることなく公式予選に突入です。 頭で分かっていながらも、なにしろどうしようもない「呪縛」なので、ここでも冒険はせずに昨日0秒フラットをマークしたセッティングで予選1回目に臨みます。 しかし試してみたいセッティングもあるので出走前にメカニックに対して 「59秒入ったらピットインするからセッティング変更して!」 と事前に伝えておきます。 <公式予選1回目> コースインしてから思うようにタイムが乗ってきません。 5周目に1分0秒台に入りますが、そこから9周目まで0秒台中盤から抜け出すことができません。 10周目に入った直後の1コーナーでT選手にパスされます。 「待ってました!」 このT選手は59秒前半で走れるライダーなので、引っ張ってもらうには格好の標的です。 絶好のタイミングで後ろに付けることができました。 ただ全日本ライダーは他のライダーに後ろに付かれることを極端に嫌います。 後ろについた途端にタイムアタックを辞めてしまうライダーが多いのです。 「お願いだからタイムアタック継続して・・・!」 心の中で祈りながら必死で後ろに付いていきます。 とりあえずT選手はタイムアタックを継続しているようです。 ほんのわずかながら離されていくのが分かりますが、ぶっちぎられるという感じではありません。 「コンマ5秒落ちくらいか・・・?」 このT選手がこのラップで59秒台前半の走りをしてくれていたら、自分も59秒台の後半に入ってるかもしれない。 T選手が59秒台の後半しか出てなかったら自分はいつも通りの0秒台前半ということになります。 ただT選手は昨日の公式練習1回目で大転倒していて、昨日は59秒台をマークしていません。 「お願い!T選手!頑張って59秒台前半出して!」 と変なお願いをしながら必死で食らいついていきます。 とりあえずその周はどのコーナーもそれなりに頑張れています。 あとは度胸一発、筑波で一番おっかない最終コーナーに思いっきり飛び込んで、いつもよりちょっとだけ早く、ちょっとだけ大きくアクセルを開けるだけ。 筑波の最終コーナーは、転倒するとマシン・ライダー共に結構なダメージを受ける高速コーナーですが、筑波であとコンマ数秒稼ぎたいときはこの最終コーナー頼みです。 腹を決めてこの最終コーナーに思いっきり飛び込みます。 そしてコーナーの中盤、いつもならもう少しバイクの向きが変わるのを待ってからアクセルを開け始めるところを、それよりワンテンポ早く開け始めます。 バイクの向きが変わりきっていないので、マシンはいつもよりアウト側に膨らんでいこうとしますが、そのバイクをねじ伏せて、アクセルをぐんぐん開けていきます。 立ち上がりアウト側の縁石が近づいてくるのが分かりますが、目線は絶対に縁石には送りません。 バイクは目線の方向に向かってしまう習性があるのです。 「絶対に曲がれる!」 そう信じてアクセルを開けながらホームストレートに戻ってきます。 「どうだ!これでダメだったら一生59秒は入んない!」 と、ラップタイムに視線を落とすと、 59秒981 「うわあ・・・入るには入ったけど、あんだけ最終コーナー怖い思いして、ぎりぎり59秒かあ・・・。」 悲願の目標達成ですが、毎度のことながら「嬉しい!」というより「とりあえずほっとする」という表現の方が当たっています。 なにはともあれ目先の目標を達成したので、マシンのセッティングを変更すべくピットインします。 ちょっと出遅れましたがここからが本当の闘いになります。 残り時間はほとんどありませんが、車体のセッティングを変更してコースイン。 しかし予選終了間近で最終タイムアタックしているバイクの邪魔をしないように後方確認をしてレコードラインに戻ろうとしますが、続々と後方からアタック中のバイクがやってくるため、なかなかレコードラインに戻れません。 そうこうしているうちにチェッカーが振られ、結局この新しいセッティングを試すことが出来ませんでした。 <公式予選 2回目> 先ほど試すことが出来なかった新しいセッティングでコースイン。 感触的にはすごく良い感じです。 ダンロップ初テストで感じたネガの部分が解消され、良いところだけがそのまま残っているような感じです。 ぼちぼちペースを上げようかな・・・という3周目でいきなり 1分0秒399 といい感じのタイムが出ています。 ここで一回ペースダウンしてクリアラップを待ちます。 その後2周にわたって1分0秒台で走り、またピットアウトしてきたライダーに引っ掛かりペースダウン。 再度クリアラップを作ってからタイムアタック再開。 8周目:1分0秒173 と2周続けて0秒台の前半をマークし、そこからもう少しペースアップ。 10周目:59秒905 と単独で59秒台を連発させます。 その後1分0秒168までタイムが落ち込んで、一旦気持ちをリセットするためにペースダウン。 そして最後のタイムアタックに入ろうと全開で最終コーナーを立ち上がると、残念!。 予選終了を告げるチェッカーフラッグが振られていて、ここで予選終了です。 もうちょっといけそうだっただけに最後のタイムアタックに入れなかったのは悔やまれます。 タイムだけを見れば予選1回目とコンマ1秒しか違わないのですが、内容的には大違いです。 まず予選1回目は他のライダーに引っ張ってもらって出した59秒に対し、今回は完全単独・自力で出した59秒です。 もうひとつは、予選1回目の59秒の感想は 「うーん、59秒台をもう一度出すには、あれだけ怖い思いでアクセル開けなければいけないのかあ・・・」 とちょっと憂鬱になる感じでしたが、この予選2回目の感想は 「まだまだ攻められる!っていうか59秒台って楽しい〜♪♪♪」 っていう感じなのです。 とにかくこの新しいセッティングでもう一度思いっきり走ってみたくてたまりません。 明日の決勝は一気に59秒台前半からあわよくば58秒台も狙ってしまおうかという勢いです。 公式予選の正式結果は19位。 明日の決勝は5列目からスタートを切ることになります。 目下ライバルと考えているライダーたちは59秒台の前半から中盤のタイムを出してきているので、この時点で若干負けていますが、車体周りのセッティングが出てきたので決勝ではぶちかましていけそうです。 【全日本選手権 筑波 3日目(決勝)】 いよいよ決勝当日となりました。 今年はこれまでに延べ17回出撃して、その内7回自己ベストを更新してきています。 かつて丸々5年間も自己ベスト更新ができなかった時期もあったくらいなので、今年のこの自己ベストラッシュは本人も驚きです。 そしてこの全日本筑波の決勝は、今までに無くさらなる自己ベスト更新への予感が高まります。 ・・・が、しかし天気が思わしくありません。 朝一番は快晴だった天気も8時くらいからはどっぷり曇り始めて小雨がちらついています。 朝のフリー走行はこの小雨がパラつく中で確認程度の走行で終えました。 決勝が近づいても小雨がパラつく状況は変わらず、本当にスタート前チェック直前までスリックタイヤ(晴用タイヤ)なのかレインタイヤ(雨用タイヤ)なのか判断しかねるような難しいコンディションになっていました。 しかし結局全車スリックタイヤでのコースインとなり、いよいよ決勝スタートを迎えます。 微妙な天候によりレース自体は「WET宣言」がされています。 これはレース途中で雨が降り出してもレースは中断にならないことを示しています。 サイティングラップ・フォーメーションラップと2周ゆっくりコースを回ってきてグリッドにつきます。 前方のオフィシャルが下がってレッドシグナルが点灯。 そしてレッドシグナル消灯でレーススタートです。 スタートは毎度のことながら大失敗。 最高尾で1コーナーに進入してしばらく無理をせず展開を見守ります。 とにかく自分にとって筑波の30周というのは、未体験ソーンになります。 レース前半で頭に血が上って攻めすぎると、後半まで体力が消耗しきってしまうことは容易に想像することができます。 5周目のバックストレートで前走車のスリップからうまく抜け出すことが出来て1つ順位を上げます。 筑波の短いストレートで前のバイクをきっちり抜くことが出来たので、この時点でマシンは調子は上々です。 しかしその後3周の間、そのもう一台前のバイクを抜くことがなかなかできません。 その間ラップタイムは1分0秒中盤ですが、まるでツーリングしているかのようにペースが遅く感じます。 「この決勝とにかくバイクもライダーも絶好調!クリアラップのチャンスが来たら絶対にベスト更新できる!」 と思った矢先のことです。 ストレートでエンジンが突然トラブルに見舞われます。 2気筒のうちひとつが死んでるような、いわゆる片肺になったような感じで、明らかにパワーダウンしています。 「プラグキャップが外れたか、キャブレターのジェットは外れたか?」 というような感じなので急遽ピットイン。 この時点でレースの順位は最下位確定ですが、ライダーの調子は良いので、ピットインしてすぐに直るようなトラブルなら再度コースインする気は満々です。 しかしながらプラグキャップもOK。 キャブレターのジェットもOK。 すぐに直る問題ではなさそうなので、ここでリタイヤが確定してしまいました。 ふっと空を見上げると、先ほどまで心配されていた天気が嘘のように晴れ渡り、絶好のレースコンディションとなっています。 最高のコンディションのもとで繰り広げられる250ccの決勝レース・・・本来であれば自分も走り続けていたはずのレースをコースサイドから眺めているのはなんだか不思議な感じです。 3日間の激闘はあっけない幕切れとなりました。 終わってから早速エンジンを開けてみると、なんとピストンリングが真っ二つに割れているではありませんか・・・。 10年以上に渡るレース人生で決勝レースでエンジントラブルに見舞われたのは初めての経験です。 大事につかってきた全日本本番用の虎の子シリンダーにもダメージが出てしまいました。 残念な結果ではありましたが筑波攻略の手応えはありました。 その手応えを確認するために急遽6月4日の筑波選手権のエントリーすることにします。 ここでもう一度筑波サーキットを思いっきり走って自分自身の生涯ベストを叩き出そうと思います。 狙いはずばり58秒台です。
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