とうとう今シーズンの最終戦を迎えました。 舞台は筑波サーキットです。 この筑波選手権ですが、この最終戦を前にしてポイントランキングでトップは自分です。 ポイントランキング2位はライバルW選手。 その差はたったの2ポイント。 この最終戦でW選手に負けると、このポイントランキングはひっくり返ってしまいます。 つまり勝った方が年間シリーズチャンピオンを獲得するという緊迫した状況なのです。 <10月20日 公式練習> 事前に2回ほど筑波に練習に出かけましたが、走っても走ってもタイムはいつもどおり1分0秒台前半〜中盤でぐるぐるするだけです。 この日の公式練習はもともとあまり期待はできませんでした。 4月のレース同様、JSBクラスとの混走の走行枠なのです。 とにかくクリアラップは皆無です。 ペースを落としてクリアラップを作ろうとしても、その後ろから別のJSBマシンが現れ自分の前を塞ぎます。 もちろん中には自分を抜いてくる速いJSBライダーもいるのですが、いかんせん違うクラスなので誰が速くて誰が遅いのか、全く分からないので走りにくいというのもあります。 まあこの日の走行も、そんな中数少ないクリアラップでの一発出しのタイムで1分0秒前半は確実にマークできていたので、あとは本番勝負です。 ちなみにW選手の調子も良さそうです。 事前練習でも何度か会っているのですが、コンスタントに1分0秒台前半で回っているようです。 まず間違いなく今回のレースでは59秒台に叩き込んでくるでしょう。 <10月21日 公式予選・決勝> 【公式予選】 コースインしてから5周目に第2ヘアピンで転倒車を発見。 W選手です。 予選序盤での転倒なのでおそらくそれほどタイムは出ていないと思われます。 自分のほうは9周目に1分0秒172をマークしてから、そのまま59秒目指してタイムアタックを継続しますが、そこから伸び悩み更なるタイムアップはできませんでした。 予選終了のチェッカーを受けてから、恒例のS字をスロー走行しながらのリーダーボードチェックです。 「えっ、負けてんの・・・」 結局この予選、W選手が転倒直前の5周目に1分0秒025をマークし、これがポールタイム。 転倒がなければ間違いなく59秒台に突っ込んできていたでしょう。 まずは先手はW選手に取られました。 強烈な先制パンチを喰らった感じです。 【決勝】 決勝前、このW選手とちょっとだけ話しをしました。 自分:「大丈夫?転倒のショックで急に走りがおとなしくなっちゃったりするんじゃないの(笑)」 とちょっとからかってみると W選手:「いやあ、全然問題ないっすよ!ますます攻めますよ!!!」 W選手:「今回はコースレコードでぶっちぎり!それしか頭にないです!!!」 と威勢の良い返事が返ってきます。 まあ確かにそれだけ調子が良いということでしょう。 で、自分はどうなんだ・・・という感じです。 まあ、相変わらず1分0秒1とか2とか、練習でも出せるようなタイムしか出ていません。 何かを変えなければ何も変わらなそうな気がする・・・。 でも何を変えれば良いのかがよく分からない。 レース直前に何かヒントになるものがないかと、元全日本250ccチャンピオンの松戸直樹選手と立ち話をしながらアドバイスをもらいます。 その話の中でちょっとしたヒントがありました。 早速フロントサスペンションのセッティングを変更。 とは言っても大きな変更ではありません。 ほんの僅か、ほんのちょっとの微調整です。 さあ、いよいよ決勝スタートの時を迎えます。 今日のW選手の調子からすれば、スタートに失敗して序盤に出遅れたらもう致命傷、そのまま逃げられてしまう展開に持ち込まれてしまいます。 ただ前回のSUGOのレースではホールショットだったので、あまりスタートを失敗する気はしません。 そのスタート。 まず出足は悪くなかったように思えます。 「ホールショットもらったか!」 と思ったほどでしたが、その先でフロントホイールが2度持ち上がってしまい、アクセルを緩めざるを得ずポジションを落とし、3番手で1コーナーに進入。 ホールショットはW選手。 その間に別のライダーを挟んでしまっていますがまずまずのスタートです。 ところがその先のS字で例の「ギア抜け」が発生。 第1ヘアピンの進入で因縁のM選手を前に出してしまいます。 「うわあ、まずいの前に出しちゃったなあ・・・」 これに動揺した矢先の、第2ヘアピンではさらに後続のK選手にもイン側に飛び込まれてここで5位まで転落してしまいます。 「痛ったあ・・・俺何やってんだろう・・・」 結局5位のまま1周目のホームストレートに帰ってきますが、もうW選手は独走態勢を築き始めています。 「もうダメだ!このまま逃げられちゃう・・・」 とにかく今自分に出来ることは目の前にいるライダーを抜いて一つでもポジションを上げること。 最初のターゲットは苦手なM選手です。 このM選手を抜きあぐんで3周くらい付き合わされてしまいますが、その間に第2ヘアピンで転倒車の姿が・・・。 なんと転倒していたのはトップ独走中のW選手。 楽しみにしていたこのW選手との直接対決ですが、結局この最終戦でも実現することはありませんでした。 気持ちを切り替えて今目の前にいるM選手の攻略に集中します。 5周目の1コーナー進入、接触覚悟でイン側に飛び込んでこのM選手をパス。 これで3位浮上。 次はちょっと離れたところにいるY選手。 この差を1周で詰めきって次の周にはY選手と真後ろにつけます。 このY選手の攻略にも3周ほど費やしますが、W選手が戦列を離れた今、トップのK選手もまだまだ射程圏内にいるのでそれほど慌てる必要はありません。 このY選手も1コーナーのイン側からやや強引にパス。 そのままの勢いで一気にトップを走るK選手の真後ろまで詰め寄ります。 この周帰ってきてラップタイマーを確認すると 59秒809 「あれっ、今の周ってクリアラップだったっけ???」 行け行けの追い上げモードで前の周がどんな展開だったかいちいち思い出せないので、この59秒台にはちょっと拍子抜けしました。 「なんだか分からないけど絶好調だ!!!」 残り周回数はまだ5周以上あります。 このK選手の攻略も時間の問題と思われたその時・・・ ガッガッガッ・・・ 以前から問題のあった「ギア抜け」がいよいよ深刻にトラブルになりつつあるようです。 それまでは「ギア抜け」しても、シフトを入れなおせば入っていたのですが、今回はそれをしてもギアが入りません。 そのままだましだまし走行を続けますが、次の周ではいつも「ギア抜け」をするギアと違うギアでも抜け始めました。 オートシフターのトラブルかと思い、シフターのスイッチを切って、マニュアルでシフト操作をしてみますが、やはりダメ。 この段階でこのレースを諦めざるを得なくなりました。 13周目・エンジントラブルでリタイヤ。 レースを諦めピットロードに戻ってきます。 仲間にエンジントラブルを伝え、その場にバイクを置き、チームの後輩たちが走っている残りのレースを外から眺めていました。 後輩二人はそれぞれのポジションを守り抜き二人そろって表彰台を獲得。 あのまま走っていれば自分が立っていたであろう表彰台を下から見上げている光景はなんだか不思議な感じでした。 ちなみにこのレースは、筑波選手権のランキング1位〜3位までが全員リタイヤしたので、ポイントランキングに変動はなく、自分がこのシリーズのチャンピオンを獲得することになりました。 それはさておいてもシーズン後半、停滞を続けた筑波のレースでしたがこの最終戦で一筋の光が差し込みました。 結果はリタイヤに終わりましたが、ライダーのテンション・闘争心は文句なく今シーズン最高でした。 マシントラブルさえなければ間違いなく自己ベストを更新していたでしょう。 正直に言うと、このレース前に筑波サーキットにはもう限界を感じていました。 「走っても走っても同じようなタイムしかでない」 「もうこのサーキットでの自分の走りは限界点まで来ているんだ」 それを最終確認する意味あいのほうが大きかったのです。 皮肉なものです。 自分の限界を最終確認するはずのレースで、自分自身の更なる可能性を確認してしまいました。 今シーズンを振り返ってみても、シーズン途中には何度も自分の限界を感じていました。 そのたびに「あー、今シーズンで自分もレースをやめられるなあ・・・」と思ってきたものです。 しかし、終わってみれば今年走った筑波・SUGOともにまだまだ可能性を残してしまいました。 来年走れるかどうかは現時点では未定ですが、もしこの場所に戻ってくることができたら、その時はまた応援よろしくお願いいたします。 ・・・NEXT・・・ Copyright (C) 2000 駒津歯科医院 All rights reserved. |